研究課題/領域番号 |
20K17633
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
大住 渉 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (30826293)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / ヒトゲノム / 直腸癌 |
研究実績の概要 |
ヒトゲノム解析の終了後、次世代シークエンサー(NGS)解析の技法は細菌叢解析にも応用されており、大腸癌の発癌機構に細菌叢変化が関与していることが明らかになっている。 この様に、NGS解析の手法を細菌叢研究に取り入れることで、細菌分布の偏りや、特徴的な細の同定から、これまで解明されていない病態が明らかになる可能性がある。そこで本研究では、大腸癌の手術及び周術期に関わる事象で病態や原因が判然としない課題を細菌叢解析から明らかにする。研究対象として人工肛門造設・化学療法施行症例の細菌叢を中心に解析を進め、細菌叢変化から病態の解明を試み臨床現場で活用する対策を立案する。大腸癌治療では、手術および周術期の様々な場面で「下痢」という腸内細菌叢の乱れを反映した症候に遭遇し、大腸癌手術自体や、大腸癌手術の周術期における処置・治療により腸内細菌叢に変化が生じる可能性が非常に高いことが推測される。例えば、大腸切除術を施行する際には、大腸内は癌や潰瘍性大腸炎などの病的状態であり、術前には大腸内を空虚にする為に、機械的腸処置(術前の下剤処置)や抗生剤投与による化学的処置を受ける。また、人工肛門を造設するケースでは、肛門側の腸管に腸管内容物(便)が通過しない非生理的環境が長期に続くことになる。しかし、これらの病態を実際に細菌叢変化から明らかにしたというエビデンスは少なく推測の域を出ないのが現状である。よって、本研究の根幹をなす学術的な問いは、「大腸癌の手術もしくは、周術期の課題となる病態を腸内細菌叢解析に より細菌叢変化から明らかにすることができるか?」ということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、検体は採取できており、解析を行っている最中であるが、時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
細菌叢結果判明次第、臨床成績と照らし合わせ進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果が解析に時間を要しており、追加実験が施行できていないため、次年度使用額が生じた。次年度は、現在解析中のNGSの結果をみて追加検体の解析を行っていく予定である。採便キットとNGS 解析のシステムに関しては、検体保存液にRNA 安定化溶液やタンパク質変性剤が含まれており糞便をこの溶液に懸濁させることで、一定期間の常温保存が可能で、検査はキット化(Mykinso Pro:サイキンソー社)されているため、自宅でも容易に糞便の採取が可能で、郵送により検体を確実に収集することができる。 NGS 解析は、大阪大学微生物病研究所内にある株式会社ビケンバイオミクスと契約を締結している。解析は1 サンプル2 万円である。NGS 解析データの取得後、詳細なマイクロソーム解析を実施する予定である。
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