研究課題/領域番号 |
20K17634
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
小川 久貴 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, Nitto核酸創薬共同研究部 研究員 (20621022)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / CART細胞 / CD44バリアント6 |
研究実績の概要 |
本年度は、正常免疫システムを有する野生型マウスでの同系移植膵臓癌モデルにおけるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を開発すべく以下の実験を実施した。①同系移植膵臓癌モデルの作製:使用する野生型マウスはC57BL/6Jを用い、マウス膵癌細胞はC57BL/6J由来遺伝子組み換えKPCマウスより樹立した複数の癌細胞株をProf. Vikas Dudejaより提供、マウス膵間質細胞はProf.Anna L. Meansより提供いただいた。C57BL/6J皮下に、マウス膵癌細胞株K8284株を0.5X106細胞をマトリゲルに混和し皮下に接種することで、接種後約10日で腫瘍サイズ100mm3前後、接種後25日ほどで1500mm3前後のばらつきの少ないモデル構築が可能であった。マウス間質細胞との共接種モデルは現在施行中である。②マウスCART細胞の作製:まずは既報の標的抗原CD19のレトロウイルスベースのCARベクター(Addgene Plasmid #107226)を用い、C57BL/6Jマウス脾臓内リンパ球への遺伝子導入、ex vivoでの純化培養プロトコールを樹立した。膵癌に対する新規のCART細胞として標的抗原CD44バリアント6 (CD44v6)のCARベクターの作製を試みた。CD44v6に対する一本鎖抗体はhybridoma(Prof. Jonathan Sleemanより提供)解析で配列を入手し、CD19CARベクターを基に構築、精製することで複数個作製した。現在、フローサイトメトリーによるCAR発現に基づく最適なCARベクターを選定中である。なお、K8284はCD44v6陽性(標的細胞)であり、間質細胞はCD44v6陰性(非標的細胞)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス膵癌モデルの構築のための細胞株の入手に時間がかかった。またマウスCART細胞作製のプロトコール樹立、新規のCARベクターを作製するためのhydridomaの入手および一本鎖抗体配列の解析、その配列を基にしたCARベクターの合成および最適なベクターの選定に時間がかかっている。またC57BL/6Jに投与するCART細胞を同定可能とすべく、C57BL/6Jのコンジェニックマウス(Thy1.1)の動物実験施設への導入に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
同系マウスを用いた皮下腫瘍膵癌モデルおよび同モデルで機能すると思われるマウスCARTベクター作製は順調に進んでいるため、CARベクターの選定が終わり次第CD44v6 CART細胞を作製し、in vitro、in vivoでの実験に移行可能である。In vitroでCD44v6 CART細胞が抗原特異的、容量依存的に機能することを確認後、K8284皮下腫瘍及び間質細胞共接種モデルに対してCART細胞療法を行う。対照CARAT細胞としてCD1 CART細胞を用い、腫瘍サイズの変化や生存曲線をモニターし、標本のサンプリングを行う。本研究で立てた仮説としては、K8284皮下腫瘍内に送達したCD44v6 CART細胞は、間質において免疫抑制細胞群 (骨髄由来抑制細胞、制御性T細胞、腫瘍関連マクロファージ)のいずれかにより強く機能抑制を受けると考えている。そのため、その機能抑制に重要な遺伝子発現変化をシングルセル解析で明らかとすることで本研究を大きく推進することができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、本年度にマウス皮下腫瘍モデルに対してCART細胞療法を実施し、治療後の皮下腫瘍をサンプリングし遺伝子発現解析を行う予定であったがまだ行えていない。 そのため、当初予定よりも研究費の使用額が小さくなったため次年度使用額が生じた。 計画からの多少の遅延はあるものの順調に進んでいると考えているので、生じた次年度使用額を含め研究を計画通り施行予定である。
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