2型糖尿病と浸潤性膵管癌の関係を解明するために研究を開始した。2型糖尿病における膵癌細胞の増殖と膵星細胞のクロストークを解明するために実験を行っていたが、その過程で膵星細胞には複数の細胞集団が存在し2型糖尿病によりその細胞集団に変化が生じていることを発見した。8週齢のC57BL6Jマウスおよびdb/dbマウスより重層単離法によりPSCを単離しシングルセル解析を施行した。PSCの細胞不均一性およびCxcl13陽性膵星細胞の存在を証明した。マーカー遺伝子としてsca1陽性かつCxcl13陽性細胞がCxcl13陽性PSCであることが明らかになった。Cxcl13陽性膵星細胞の発現遺伝子解析により、血管新生に関するエンリッチメントが増強していることが明らかになった。そして、2型糖尿病モデルマウスではCxcl13陽性PSCが減少していることがあきらかになった。フローサイトメトリーを使用して、Cxcl13陽性PSCの単離を行った。皮下移植モデルを作成し、Cxcl13陽性PSCと共に移植した腫瘍 (Cxcl13陽性PSC1.0*105+膵癌細胞株1.0*105)では腫瘍形成が起きないことが明らかになった。腫瘍細胞数を増やし移植したところ腫瘍形成を得た(Cxcl13陽性PSC 1.0*105+膵癌細胞株2.0*105)。4週間の観察後に摘出した腫瘍のマイクロアレイ解析で、Cxcl13陽性PSCと共に移植した腫瘍では免疫応答が増強し、B細胞を中心としたリンパ球浸潤が亢進していることが明らかになった。以上の結果より、PSCにはCxcl13陽性PSCという希少集団が存在し、血管新生およびB細胞を中心とした腫瘍免疫を活性化することにより浸潤性膵管癌を抑制することが証明された。
|