本年度は動物を用いた消化管狭窄モデル作成の確立を目指し研究を施行した。消化管狭窄をきたす方法として、経口内視鏡下に透明プラスチックキャップを併用した内視鏡下粘膜切除(Endoscopic mucosal resection using a cap-fitted panendoscope,以下EMRCと略)により消化管粘膜に潰瘍を作成し、自然経過による創傷治癒の過程を利用した。 ブタの食道にEMRCによって複数個の潰瘍を形成したのち、7日後に食道を摘出し潰瘍を作成した部分の狭窄の程度について検討した。はじめに、摘出した食道を用いてEMRCによって潰瘍を作成した部分とEMRCを施行していない健常部分との管径を比較した。EMRCによる潰瘍を作成した部分では創傷治癒の過程で消化管内腔が狭くなる傾向にあったことより、粘膜損傷を起こすことで消化管狭窄モデルが確立できる可能性があることが示された。また、潰瘍を作成する面積の大きさに比例して狭窄の程度が強くなる傾向にあり、ある一定以上の範囲において潰瘍を作成することが消化管狭窄モデルの作成に有用であることが明らかとなった。次いで、潰瘍作成部分と健常部分の組織を用いて各々の線維化の程度を比較したところ、健常部分に比較して潰瘍作成部分において線維化の程度がより強く認められる傾向にあった。このことから、潰瘍形成後の創傷治癒過程において線維化が促進されることにより内腔の狭窄をきたす可能性があることが示唆された。
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