研究実績の概要 |
これまでの研究結果より、線維化を伴う肝臓では肝障害後の肝再生が促進されることが示唆されている。また線維化を伴う肝臓の肝再生における特徴は、肝障害部位へのmacrophage集積の亢進である。macrophage集積が肝再生促進に関与しているとの仮説をたて、以下の検討を施行した。 (1)肝線維化マウスモデルでは肝障害前に肝内でのCCl2, CD206, MARCOの発現が正常マウスと比して上昇していたがiNOSの発現に差がないことがrtPCRで明らかとなった。一方で、肝線維化マウスモデルにおける正常マウスに比した上記の分子の発現亢進は肝再生中には認めなかった。 (2)C57BL6マウスにCCl4を長期腹腔内投与することで肝線維化マウスモデルを作成。肝線維化マウスに肝阻血再灌流障害を惹起させた後にコントロール群とchrodronate liposome群(障害後24hと72hに投与)に割付け、96h時点での2群間の肝再生を比較検討した。chrodronate liposome群においてF4/80染色でmacrophage集積の低下を認めるとともに、肝組織の再生低下と障害組織の修復の遅延を認めた。肝再生に関わるサイトカインとしてHGF, EGF, TWEAK, VEGFの肝内での発現をrtPCRにて検討したが、コントロール群とchrodronate liposome群において有意差は認めなかった。 以上より、線維化を伴う肝臓での肝障害後の肝再生促進にmacrophageの集積が関与していることが示唆された。線維化を伴う肝臓にはM2 macrophageが元々多く存在する可能性があるが、macrophageの肝再生に及ぼす影響として周囲微小環境の変化に関して明確な結果を得ることはできなかった。
|