研究実績の概要 |
当初、脂肪肝・脂肪肝炎マウスモデルにおける肝障害後肝再生メカニズムの解明を計画していたが、研究環境が整わず実施困難となった。よって今年度(最終年度)は、これまでの結果で肝修復に重要な機能を果たすと示されたマクロファージの詳細なメカニズムに着目することとし、特に肝障害時のマクロファージと深く関連するTWEAK/Fn14 pathwayとHMGB1の発現に関して検討した。肝阻血再灌流障害マウスモデルにおいて肝内TWEAK発現は肝修復(阻血再灌流後48h,72h)時に上昇を認めなかった。また肝内Fn14発現と血中HMGB1発現は肝障害(阻血再灌流後8-12h)時に上昇を認めたがそれ以降は速やかに減少した。以上の結果より、上記moleculesは肝再生修復に関わる可能性が低いと考えられた。 研究期間を通じて実施した研究の成果として、線維化を伴う障害肝における急性肝障害後の肝修復機構を明らかとした。線維化を伴う障害肝においては、元来CD206・MARCO陽性M2マクロファージが肝内に多く存在し更なる肝障害時に特異的な反応を呈することが考えられた。具体的には阻血再灌流障害48時間後の肝修復開始時のTNFa,IL-1b,IL-6に代表される炎症性サイトカインの発現が低く急性炎症の遷延が軽減されるとともに、96時間後のマクロファージ・hepatic stellate cellの集積が亢進し壊死領域の貪食を含め肝障害後の創傷治癒反応を顕著に認めた。さらにCD31免疫染色に基づく血管新生(micro vessel density)の亢進も加わり、線維化を伴う障害肝において肝修復が促進されたと考えられた。
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