研究課題/領域番号 |
20K17645
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉原 輝一 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70850311)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胆道癌 / 免疫反応 |
研究実績の概要 |
胆道癌においては、炎症性サイトカインのIL-6とTGFβが相互刺激し、化学療法抵抗性や癌転移が誘導される。さらに、これらのサイトカインは、腫瘍における不均一性も認められる。一方で、炎症組織においては、同サイトカインによって不均一にTリンパ球の分化を誘導するため、癌が悪性形質を獲得するにつれサイトカインの腫瘍内不均一性が生じ、分化Tリンパ球の局在現象が起こりうる可能性がある。このメカニズムを検討するために、臨床切除検体を用いて、サイトカインの局在とリンパ球分化(サブタイプ)への影響を検討した。100例を超える胆道癌切除検体のリンパ球を染色し、癌より分泌されるIL-6、TGFβの染色状況と局在、浸潤リンパ球のサブタイプ(FOXP3,IL-17等)については検討したところ、切除検体における染色部位が異なり、サイトカイン局在とリンパ球浸潤局在とサブタイプには関連があり、リンパ球浸潤局在とサブタイプの違いによって、切除後の予後が異なることが明らかとなった。in vitro研究を目標として、癌悪性化細胞株(化学療法抵抗株、浸潤株、放射線治療抵抗株)の作成を開始し、化学療法抵抗株、浸潤株を樹立した。現在、各癌悪性化細胞株の増殖能、浸潤能、抵抗性を検討しつつ、次世代シーケンスを行い、その細胞の特徴の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胆道癌細胞株を用いて、IL-6やTGFβなどが分泌されること、各レセプターが発現していることを確認した。また、IL-6やTGFβの添加によって、増殖、浸潤、化学療法抵抗性が惹起されることを確認した。胆道癌切除検体を用いて、IL-6やTGFβの染色部位には腫瘍内局在があることを示した。IL-6とTGFβの染色には関連性があり、その中間因子とされるLRGも関連性があることが示された。さらに、リンパ球のサブタイプ(FOXP3,IL-17等)を検討すると、炎症疾患で、IL-6やTGFβによって誘導されるリンパ球のサブタイプ(FOXP3,IL-17等)と同様な分化傾向にあることが示された。リンパ球のサブタイプによって、癌における浸潤部位(中心部や浸潤部)は異なり、切除後の治療成績(再発および全生存)との関連性が認められた。上記胆道癌細胞株を用いて、癌悪性化細胞株(化学療法抵抗株、浸潤株、放射線治療抵抗株)の作成を開始し、化学療法抵抗株、浸潤株を樹立した。各癌悪性化細胞株の増殖能、浸潤能、抵抗性を検討した。次世代シーケンスを行い、その細胞から分泌されるサイトカインを中心に解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
切除検体を用いて、他のリンパ球サブタイプ(Tリンパ球、CD4、CD8リンパ球、M2マクロファージ、PD1、PD-L1)の染色を行い、腫瘍内不均一性についての検討を進める。さらに、樹立した癌悪性化細胞株(化学療法抵抗株、浸潤株)を用いて、種の癌悪性化細胞株のサイトカイン分泌状況の検討や、naiveリンパ球を用いた分化誘導について検討を行う。各癌悪性化細胞株(化学療法抵抗株、浸潤株)の網羅的遺伝子発現解析を行い、リンパ球の分化誘導に影響する因子について検討を行う。あらたな癌悪性化細胞株として、放射線治療抵抗株の作成を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、研究と実験の進捗が遅れているため
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