研究課題
p53機能の再活性化のもたらす抗腫瘍効果に着目した。p53タンパクは半減期の短いタンパクでありその分解阻害に着目した。p53タンパク寿命を指標とする独自のハイスループットスクリーニング系を構築し、まず野生型p53のタンパク寿命を延長する化合物の探索を行った。EGFP融合p53タンパク質の安定発現株を用いたスクリーニング系を構築し、この系のZ’ factor(系の精度の指標)は0.7~0.8と高感度であり、小分子化合物による野生型p53タンパク寿命の変化を鋭敏に評価することが可能であった。またカウンターアッセイとしてEGFP-CL1degron発現株を用いた系も作成し、非特異的プロテアソーム阻害や自家蛍光による偽陽性の排除が可能であることを確認した。この系を用いて小分子化合物ライブラリー10000種に対してスクリーニングを行い、68種のヒット化合物を同定した。さらに内因性p53タンパクへの作用、用量依存性をwestern blottingにより評価し、ヒット化合物7種へと絞り込んだ。それぞれの化合物はp53の分解を阻害することでp53タンパクの寿命を延長しており、そのうち5種類はp53への作用の報告があり、スクリーニング系の妥当性が示唆された。残り2種の化合物は同一の骨格を有し、今までにp53への作用の報告がない化合物であった。この2種の化合物のp53安定化の機序について探索を行ったところ、大腸癌細胞株に対してDNA障害を起こさず、一方でユビキチン化を阻害することでp53タンパクを安定化することを明らかにした。またプルダウンアッセイ、サーマルシフトアッセイではp53-MDM2結合阻害作用を示さず、MDM2阻害剤と異なる機序によって分解阻害による安定化がなされていることを明らかとした。その2種の類縁化合物のp53分解阻害活性を探索し活性化部位の同定を行っている。
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