本研究は、同種異系樹状細胞を用いた腫瘍抗原情報を付加したNKT細胞活性化ワクチン治療による抗腫瘍効果を検証する研究である。前年度までの研究で、電気穿孔法による腫瘍タンパク抗原を樹状細胞に導入したNKT細胞活性化ワクチン(OVA-EP-galDC)を作成した。 ①ワクチンの腫瘍予防効果の検証を行った。OVA-EP-galDCは皮下接種腫瘍を完全に拒絶した。また、CD8+T細胞やNK細胞枯渇にて抗腫瘍効果は減弱・消失した。②転移性肺腫瘍モデルにおいて、OVA-EP-DC/Galは対照群のPBS群と比較して生存期間を延長した。 次に免疫応答の詳細な検討を行った。③OVA-EP-galDC投与により脾臓内のinvariant NKT細胞、NK細胞や樹状細胞が効率的に誘導された。④上記実験にてOVAを導入していないgalDCにおいてもOVA-EP-galDCと同等の脾臓内へのinvariant NKT細胞などの誘導を認めたため、OT-1 CD8+ T細胞を事前に投与することで、抗原反応を増進した。ワクチン接種後7日目の解析で、OVA-EP-galDCはOVA特異的T細胞やメモリー前駆細胞を効率的に誘導した。⑤長期免疫の検討(接種後50日目)をした。OVA-EP-galDCは、抗原特異的CD8+T細胞を脾に誘導し、高い腫瘍反応性(INF-γ産生能)を示し、抗原特異的な長期メモリーT細胞の効率的に誘導したことを示した。⑥皮膚などの非リンパ系組織に存在するレジデントメモリーT細胞(TRM)が皮膚腫瘍の拒絶において重要であることが知られており、OVA-EP-galDCによる皮下接種モデルにおけるTRMの動態を解析した。OVA-EP-galDCは皮膚における抗原特異的なTRMを誘導し、抗腫瘍効果に関与することが示唆された。
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