研究課題/領域番号 |
20K17650
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
杉田 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 医学研究員 (70802346)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胃癌 / NKT細胞 / MDSC / ワクチンベクター / 免疫チェックポイント阻害剤 |
研究実績の概要 |
腹膜播種は胃癌の再発形式の45%と最多を占め、死因の約60%は腹膜播種に伴う癌性腹膜 炎とされており、未だ有効な治療法がなく予後不良である。近年、胃癌に対する免疫checkpoint阻害剤の有効性が証明されたが、subgroup解析で腹膜播種症例に対しては十分な効果を示すに至っていない。研究提案者は腹膜播種の病態 に腹腔内骨髄由来抑制細胞(MDSC)が関与することを明らかにしたが、強力な抗腫瘍免疫を得るには、MDSCの制御に加えて腫瘍反応性CD8+T細胞の誘導と抗PD-1抗体耐性の解除が重要である。腹膜播種の病態には腹腔内G-MDSCが強く関連することを想定しており、腹膜播種の難治性と抗PD-1抗体に対する不応性は腹腔特異的な免疫環境が根底にあると考えた。抗PD-1抗体への反応が良好とされるMC38大腸癌細胞株を用いて腹膜播種マウスモデルを作成し、腹膜播種に対する抗PD-1抗体治療の効果を検討したところ、やはり生存期間の延長は認めなかった。腹膜播種の急速な病状の進行に関しては、PMN(Polymononuclear)-MDSCが大きく関与していることを示すことができた。これに関して、抗PD-1抗体との関連を詳細に検討する必要が生じている。 また、開発中のNKT細胞活性化ワクチンベクターは、腫瘍反応性T細胞を誘導することを確認しており、さらにMDSCの制御と抗PD-1抗体耐性の解除にも有効である可能性がある。本ワクチンベクターを用いて、NKT細胞を介した免疫制御基盤技術の確立と腹膜播種難治性の克服が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PD-1耐性腹膜播種モデルにおいて抗PD-1抗体に対する不応性は腹腔特異的な免疫環境が根底にあると考え、腹膜播種モデルを構築した。抗PD-1抗体への反応が良好とされるMC38大腸癌細胞株を用いて腹膜播種マウスモデルを作成し、腹膜播種に対する抗PD-1抗体治療の効果を検討したところ、やはり生存期間の延長は認めなかった。腹腔内免疫細胞・サイトカインを網羅的に解析したところ、免疫抑制機構の中心的役割を担う骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell;MDSC)が腹膜播種の病勢と有意に相関を示 した。特にMDSC subsetの1つである、好中球由来のPMN(Polymononuclear)-MDSCは爆 発的に増加し、PMN-MDSCを誘導するサイトカインであるG-CSFも病勢との有意な相関を認めた。抗Ly6G抗体を用いてPMN-MDSCをdepletionを行い、腹膜播種の病勢がある程度制御できることを示した。腹膜播種の病状評価に関しては程度に関しては、ルシフェラーゼ付加MC38細胞株をI V I Sを用いて行う定量化は可能となった。腹膜播種の病状評価と腫瘍免疫微小環境の評価として、腹水または腹水洗浄液の解析を行った。腹水中サイトカイン解析及びPMN-MDSCのdepletionと抗PD-1抗体の併用を検討している。 また、NKT細胞の活性化ワクチンベクターとして、樹状細胞にOVA蛋白を導入し、α-galactosylceramideを付加したDC/Gal-OVAの機能解析と安定供給法の検討を行っている。ワクチンベクターの作成に対し、より大量かつ効率的に誘導するEP法の条件設定を進めており、良好な結果を得ている。NKT活性化ワクチンベクターの質的評価を行い、腹膜播種モデルに対する治療効果の検証する。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染による制限により、円滑に研究を進めることが困難となっている。 NKT細胞の誘導により、CD8+細胞の表現型の変化を調べる必要があるが、exhaustion関連分子を調べているが、一定の表現型で細胞数及び割合が変化する分画を認めているために、これをRNAシークエンスと関連分子発現アレイを用いて分子のスクリーニングを行い、どの様な点に違いがあるのかを見極めて、迅速化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染の蔓延による制限により、円滑に研究を進めることが困難となっている. 実質、約2か月の間、動物実験が十分出来る環境でなくなり、予定がやや遷延した。これに伴い、予定の経費を使用しなかった。
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