胃癌腹膜播種は難治性で抗PD-1抗体に対しても耐性を示す。我々が開発したNKT(natural killer T)細胞活性化ワクチン ベクターは、腫瘍反応性T細胞を誘導し、さらにMDSCの制御と抗PD-1抗体耐性の解除にも有効である可能性がある。 まずは抗Ly6G抗体を用いて腹膜播種モデルの治療戦略を再度構築した。マウスの腹腔内にMC38大腸癌細胞株を腹腔内投与し、腹膜播種モデルを作成した。その後にG-MDSCを抑制する抗Ly6G抗体をマウスに腹腔内投与することでマウスの生存の延長が図れるかを確認した。しかし最近の研究では抗Ly6G抗体の投与のみでは生存期間の延長は示せなかった。以前の我々の研究で抗Ly6G抗体の投与により腹腔内MDSCを抑制しCD8陽性T細胞の数が回復することが示せているため回復したCD8陽性T細胞の疲弊をブロックするためPD-1抗体との併用を行なった。併用群では一定の治療効果を示たが有意な差は得られなかった。この原因としてはこれは抗Ly6G抗体の効果が継続的に得られないことと考えられた。 今後はGーMDSCに特異的に働くCD244というタンパクに着目しその動態をさらに研究していく。またCD244をブロックするCD244抗体を用いた治療戦略を研究していくことが腹膜播種治療の開拓につながると考えられた。
|