大腸癌(CRC)の多くはマイクロサテライト安定型(MSS)であり、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)に対する奏効率が低いことが多い。RNA編集はアミノ酸配列を変化させることにより新抗原を産生する。本研究では、化学放射線療法(CRT)によって人工的にRNA編集を誘導し、MSS CRCにネオアンチゲンを生成させた。合計543のCRC標本を系統的に解析し、ADAR1の発現パターンを調べた。In vitroおよびin vivoの実験も行った。RNA編集酵素ADAR1は、マイクロサテライト不安定性の高いCRCで発現が上昇し、ICIとの高い親和性をもたらした。MSSのCRCではADAR1の発現は低かったが、オキサリプラチン(OX)を含むCRTはADAR1を誘導することによりRNA編集レベルを上昇させた。免疫組織化学的解析から、CAPOX(カペシタビン+OX)放射線療法を受けたCRC患者では、手術のみを受けたCRC患者のADAR1発現と比較して、ADAR1のアップレギュレーションが示された(p<0.001)。他のレジメンと比較して、OXを用いたCRTは、1型インターフェロンをトリガーとするADAR1の発現誘導を介して、MSS CRC細胞株(HT29およびCaco2、p<0.001)のRNA編集を効果的に誘導した。OXによるCRTは、ネオアンチゲン候補であるサイクリンIのRNA編集を促進した。ネオアンチゲンは、OX-CRTレジメンによるRNA編集によって人為的に誘導することができる。CRTはRNA編集を介してプロテオミクスの多様性を促進できる。
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