我々は過去に、肝細胞癌患者において肝細胞癌に特異的に高発現している膜糖蛋白質であるGlypican3(GPC3)を標的に磁気細胞分離およびFlow Cytometryを用いて血中の循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell; CTC)を検出する方法を確立した。腫瘍の増殖過程においてどの段階でCTCが検出できるようになるのかを評価するために免疫不全マウスを用いた実験を行った。Hepa1-6にレンチウイルスベクターによる遺伝子導入でGPC3を発現した細胞をマウスの尾静脈に注入し、同様のプロトコールでの検出を試みた。しかしGPC3の発現率が低く、十分な検出が不能であった。より発現率の高いEpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)の導入も試みたが、やはり検出力は低く、腫瘍の増殖過程とCTCの関連については評価できなかった。 炎症性サイトカインと癌増殖およびCTCの関連についての解析では、マウスの肝切除モデル、肝壊死モデルを使用した。Hepa1-6を脾注し、その後に脾摘、30%の肝切除もしくは30%の肝壊死手術を施行した。2週間後に腫瘍の生着状況を確認したところ、肝腫瘍数および腫瘍占拠率は肝壊死群で有意に多かった。各モデルでTNFα、IL-6の定量を行うと術当日のIL-6は有意に肝壊死群で高値であった。 EpCAMを用いたCTCの検出は、Controlと30%肝壊死モデルにおいて術後0日から7日にかけて検出量は低下していたが、術後7日の時点で30%肝壊死モデルの方がCTC量が多い傾向にあった。
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