炎症性サイトカインと癌増殖の関連についての解析では、マウスの肝切除モデル、肝壊死モデルを使用した。肝壊死モデルの方が肝腫瘍数および腫瘍占拠率が有意に多かった。肝切除モデルと肝壊死モデルの残肝RNAをそれぞれday1/day3/day7でマイクロアレイを用いて解析した。両群のRNAの違いは、day1では262種類、day3では103種類であった。一方、day7では両群の違いは1440種類でありこの違いに着目した。この1440種類に対してケモカイン・サイトカイン解析を行ったところ、IL-1β・TGF-β1といったサイトカインの他、腫瘍増殖や転移に関わるとされるCXCL13・CXCL9をはじめとする多くのケモカインが発現していた。day7におけるq-PCRおよびELISAの結果、肝壊死モデルでCXCL13とそのレセプターであるCXCR5の上昇を確認した。次にスクラッチアッセイでCXCL13がある状況下ではHepa1-6の増殖能が促進されることを確認した。 一方、肝細胞癌患者における循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell; CTC)の解析では、門脈中のCTCは末梢血のCTCよりも有意に再発に寄与することを明らかにした。IL-1βの遺伝子多型と門脈血のCTC数に有意な関連を認めた。 末梢血のCTC数は原発巣の顕微鏡的脈管侵襲と相関し、3cm以下の小型肝癌においても、CTC4個以上の症例では系統的肝切除が望ましいことを明らかにした。
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