研究課題
本研究は、がん組織中に少数存在し、既存の抗がん剤治療や放射線治療に抵抗性を示して、がんの再発、転移に関わる癌幹細胞様細胞 (Cancer stem-like cells: CSLC) に対する新規治療法開発を最終目的とする。人体にはがん細胞を含む異物を排除する免疫機構が存在し、これによりがん細胞も排除されている。しかし、がん幹細胞は細胞表面に免疫細胞を抑制する分子を発現したり、免疫を抑制する液性因子を分泌することで、がん患者の体内で免疫から逃れることで長期生存していると考えられており、本研究では、この点を明らかにする。前年度までに、誘導した膵癌幹細胞様細胞における免疫抑制性表面マーカーの解析を中心に研究し、その成果を論文として発表した。しかしながら、CSLCの誘導にトラブルにより、その後の解析に遅れが生じた。本研究でのCSLC誘導は独自培地を用いた短期培養 (1週間) でのsphere誘導とその後のラミニンコート上での長期培養 (2か月) から成る。今回、長期培養後の細胞生存率に著しい減少が見られ、その後の解析に支障が生じた。肝癌由来細胞株を用いた我々のCSLC研究では長期培養を行わずに短期培養のみでCSLCが誘導できることを確認している。そこで、膵癌由来細胞株においても、肝癌由来細胞株と同様の短期培養にてCSLC誘導を行った。短期培養系では、低接着培養器を併用することでCapan1において抗癌剤 (オキサリプラチン及びイリノテカン) 耐性亢進を示すSphere細胞を得た。RNA-seq解析及びGene Set Enrichment Analysisの結果、Capan1から誘導したCSLCでは免疫と関連して抗原提示に関するパスウェイの有意な負の濃縮が観察された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Annals of Surgical Oncology
巻: 29 ページ: 7423~7433
10.1245/s10434-022-12220-w