前年度は、発生機序の違うsprouting angiogenesisとvasculogenesisの2種類に着目して、後者が骨髄由来内皮前駆細胞によって仲介されていることに注目し、同種骨髄移植KPCマウスを用いて両者識別する検討を行った。すると、血管新生のマーカーであるCD31と骨髄由来細胞(GFP陽性)の分布が、腫瘍内のAcinar-to-ductal metaplasia (ADM)様の形態を示す部分に偏っていることを発見した。我々は、このADM like lesionが線維形成性変化と局所膵実質への癌細胞の浸潤を促進し、さらに、単球系細胞をリクルートするIL12AがADM like lesionでより高く発現することを以前に報告している。そこで、膵癌における血管新生に、このADM like lesionが骨髄由来血球細胞を介して関わっているのではないかと考え、ヒト膵癌切除組織131例を用いて、CD31(血管内皮細胞)、Amylase、CK19、CD68(マクロファージ)、CD163(M2 マクロファージ)、IL12Aの免疫組織染色を行なった。結果は、ADM like lesionでは腫瘍内の他の部位に比べて微小血管密度が顕著に高く、また、ADM like lesionにおける微小血管密度が高いほど予後不良であった。さらに、CD68とCD163、IL12Aを染色し、M2マクロファージとIL12Aの発現を検討した結果、ADM like lesionにおいて、CD68、CD163とIL12Aの発現は顕著に高かった。これらの結果から、ADM like lesionではIL12Aの産生により骨髄由来のマクロファージが動員され、M2マクロファージを介した血管新生が亢進しすることで局所浸潤や転移形成に寄与している可能性が示唆された。
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