本年度は、昨年度に得られたCML-HMGB1が胃癌の悪性度を増加するとの結果に対して、CML-HMGB1のシスプラチン感受性への影響、ならびに、CML-HMGB1標的化の試みとしてエチルピルビン酸とタンシノンの効果を検討した。ヒト胃癌細胞株MKN74とTMK1をぐろきさーるでCML-HMGB1生成を促進したうえでシスプラチン処理すると、その効果は両細胞とも約25%低下した。すなわち、CML-HMGB1はHMGB1よりも強くシスプラチン耐性を誘導することが明らかになった。エチルピルビン酸あるいはダンシノンでヒト胃癌細胞株MKN74とTMK1を処理したところ、HMGB1 mRNA発現が抑制された。この系に高糖濃度培養液での持続培養を併用した時のCML-HMGB1発現は抑制された。ヌードマウス皮下腫瘍モデルを用いてシスプラチンの効果を検討すると、シスプラチン単剤に比較し、エチルピルビン酸、あるいは、タンシノンを併用することにより、抗腫瘍効果はTMK1では2倍、および、6倍に増加し、MKN74では1.5倍、および、3倍に増加した。これらのことから、エチルピルビン酸、あるいは、タンシノンをシスプラチンと併用することにより、シスプラチン感受性を増大することが可能であると考えられた。
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