研究実績の概要 |
癌死亡の90%は転移に起因しているが、転移のメカニズムは未だ明らかでない。大腸癌細胞が遠隔臓器に転移した後、癌細胞の増殖を促進するための微小環境(ニッチ)が形成されることが知られている。しかしながら、転移ニッチは血管構成細胞や炎症免疫細胞などの様々な非癌細胞より構成されており、癌細胞増殖に重要な遺伝子やシグナルの同定は不十分である。申請者は、転移巣に存在する線維芽細胞 (carcinoma-associated fibroblasts: CAFs) が転移ニッチを形成し、癌細胞の増殖に重要な役割を演じていると推測している。申請者は、患者大腸癌を模倣した patient-derived xenograft (PDX)モデルを樹立し、単一癌細胞よりも上皮系/間葉系の性質を有した癌細胞集団がより顕著に転移を形成することを明らかにした実績がある (Mizukoshi K., et al., International Journal of Cancer, 2019, In press, DOI:10.1002/ijc.32672、研究代表者が筆頭著者)。本研究では、大腸癌PDXモデルを使用し、転移ニッチにおけるCAFsの役割を明らかにし、転移巣での癌細胞増殖に必須な遺伝子やシグナル伝達を同定し、前臨床マウスモデルを使用した新規転移抑制治療の基礎を確立することを目標とした。 『大腸癌の転移巣でのニッチ形成にCAFsがどのように関与しているのか?』の問いを明らかにするため、17例の手術により摘出された大腸癌部を酵素処理し、5例の癌オルガノイドのprimary cultureに成功した。今後は培養条件をより最適化して癌オルガノイの症例数を増やす必要がある。
|