研究実績の概要 |
【目的】切除可能膵癌において術前化学療法(NAT)が標準治療であるが、その治療効果は不均一である。NAT後の膵癌切除検体を用いた網羅的発現解析によりNAT耐性機構を明らかにし、新規治療戦略を提唱する。【方法と結果】2007年から2018年の間、NAT後切除した膵癌症例において治療効果を認めた13例(Evans分類IIB以上)と治療耐性13例(Evans分類I以下)のnCounter Analysisにより癌微小環境の網羅的発現解析を施行した。耐性群ではMET, LAMB2, COL17A1の高発現を認め、GO解析ではHemidesmosome assemblyの亢進を認めた。同期間にupfrontもしくはNAT後に切除した膵癌308例の発現解析において、METに注目し予後解析を行うと、upfront例ではMET発現による予後の差を認めなかった一方で、NAT施行後では、MET高発現は低発現に比べ全生存期間や無再発生存期間において有意に予後不良であった(p=0.002, 0.003)。術後再発部位では、MET高発現症例は有意に肝転移再発を認めた(p=0.035)。次に、MET-knockout (KO)膵癌細胞株を作成し、MET-KOによるspheroid形成不全や増殖抑制、YAP/CTGFシグナルを介した細胞外マトリックス(ECM)の発現低下を認めた。肝転移マウスモデルでは、MET阻害による肝転移抑制効果やGemcitabineへの上乗せ効果を認めた。肝転移巣では、MET阻害によるECMの発現低下がCD8 T cellの腫瘍内浸潤を促し、抗腫瘍免疫の賦活化を認めた。【結論】MET-YAP-CTGF経路によるECM産生が、治療耐性や免疫抑制的環境に関与し治療耐性を生じる。
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