研究実績の概要 |
本研究の目的はAssociating Liver Partition and Portal vein ligation for Staged hepatectomy(ALPPS)手術における、肝再生促進の機序解明である。具体的には、1)肝組織内の低酸素状態が肝再生を促進させること, 2)その機序は炎症性サイトカインではなく, NOS活性化とNO誘導にあること, の2点を解明し、肝再生療法への展開を図る。現在、1)に関して研究を行っており、以下に実績の概要を記す。 まずALPPSモデルのラットにおける血流評価を超音波ドプラー法で行ったところ、残肝の門脈血流速度は変化なかったが、肝動脈血流速度はcontrolと比較して上昇していた。門脈結紮モデルでは逆に肝動脈血流速度は低下していた。この差が肝組織内の酸素飽和度の違いかどうかを検討するため、肝組織内の酸素飽和度の測定を予定している。また、血液の粘性と血流の速度によってもたらされる応力であるshear stressと, 内皮一酸化窒素合成酵素 (eNOS) の活性化およびNO誘導が肝再生促進因子であり、ALPPSとPVLは,その術式が相違するため, やはり血流動態の差が肝再生の差であることが示唆された. そこで, shear stressならびにeNOS活性化とALPPS術後の肝再生現象との関連に着目してL-NAME(eNOS阻害剤)を投与したALPPSモデルについて検討したところ, 有意な肝再生抑制が確認された. さらにMolsidomine(NO産生剤)投与PVLモデルにおける肝再生促進効果も確認できた.
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