研究実績の概要 |
本研究の目的はAssociating Liver Partition and Portal vein ligation for Staged hepatectomy(ALPPS)手術における、肝再生促進の機序解明である。具体的には、1)肝組織内の低酸素状態が肝再生を促進させること, 2)その機序は炎症性サイトカインではなく, NOS活性化とNO誘導にあること, の2点を解明し、肝再生療法への展開を図る。2021年度は1)に関して実験をすすめ、結果が得られたため、2022年度は2)に関して研究を行い、以下の成果を得られた。 ALPPS群では,術後48時間で,PVL群(1.33%±0.11%)に比べ,有意なFLR再生(FLR/BW: 1.60%±0.08%,P<0.05) が認められた.ALPPS群では、GdCl3を用いてPVL群と同程度に血清インターロイキン6の発現が抑制された。しかし、GdCl3を投与したALPPS群では、FLR/BW比およびKi-67標識指数がPVL群(それぞれ1.33%±0.11%、12.78%±1.55%)より有意に高かった(1.72% ± 0.19%, P < 0.05; 22.25% ± 1.30%, P < 0.05 )。phospho-Akt Ser473およびphospho-eNOS Ser1177レベルは、PVL群に比べALPPS群で増強された。 さらにL-NAMEを投与したALPPS群とPVL群では、FLR/BW比とKi-67標識指数に差はなかった。molsidomineで治療したPVL群では、FLR/BW比とKi-67標識指数はALPPS群と同じレベルまで上昇した。 炎症性サイトカインの早期誘導はALPPS後のFLRの再生促進には重要でないかもしれないが、Akt-eNOS経路の活性化はFLRの再生促進に寄与するかもしれないことが判明した。
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