研究実績の概要 |
我々は研究の第一段階として、計画書に記載した通り、肝虚血再灌流障害に対するDOACの効果を検証した。マウスを用いて肝虚血再灌流モデルを作成し、DOACのひとつであるDabigatranが虚血再灌流の引き起こす肝障害を軽減することを示した。その過程で肝虚血再灌流の病態には、凝固カスケードの主要な役割を担っているThrombin、全身性の炎症メディエーターであるHMGB-1が深く関わっていることが判明した。Dabigatranは微小循環を改善し肝類洞内皮細胞を保護するとともに、内因性のThrombomodulin作用を活性化することでHMGB-1を分解・不活化し、肝組織保護に作用しているものと推察された。我々は、肝細胞癌進展を促す要因として肝虚血再灌流障害に注目しており、それらを介在するメディエーターとしてHMGB-1に注目している。今回の結果は、DOACによるHMGB-1制御が可能であることを示唆するものであり、肝細胞癌治療の新たな可能性を期待させる非常に有益なものであったため、論文化して、雑誌:Liver transplantationに投稿・採用された(Noguchi D, et al. The Impact of Dabigatran Treatment on Sinusoidal Protection Against Hepatic Ischemia/Reperfusion Injury in Mice. Liver Transpl. 2020 Oct 27.)。 次段階として、肝細胞癌マウスモデルを作成し、肝虚血再灌流障害により癌進展が促されるかどうか、さらにそれらをDOACにより制御することが可能かを検証する予定である。
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