研究実績の概要 |
circular RNA(以下circRNA)は、数百から数千の塩基からなる環状で安定した構造を持つRNAである。哺乳類を含む真核生物で豊富に発現しており、数万種の存在が確認されている。また、microRNAやRNA Binding Proteinsを介して転写、翻訳を調節する機能を有している。癌を含む様々な疾患との関連性が指摘されつつあり、新たなバイオマーカーや核酸医薬への応用が期待される。本研究の目的は、食道扁平上皮癌(ESCC)の治療抵抗性と関連するcircRNAを特定すること、さらに、特定されたcircRNAを用いて新規のバイオマーカーや核酸医薬開発の可能性を探索することである。 ESCCの細胞株であるTE11と、シスプラチン暴露により樹立したTE11シスプラチン耐性株(TE11R)を次世代シークエンスにて解析した。TE11RにてTE11よりも高発現を示す10のcircRNAについてqRT-PCRにて発現定量を行ったところ、TE11およびTE8のシスプラチン耐性株において親株よりも高発現を示すcircRNA(以下circX)を同定した。circRNAを用いた治療応用への可能性を検討するために、今回抽出したcirc_Hの下流シグナルについて検討した。Gene ontology解析の結果、circ_XはTranscription regulation, DNA-binding, Nucleus, Alternative splicingなどと相関が強く、遺伝子の転写に強く関連することが分かった。特に、スプライシング関連因子としてSRSF1(serine/arginine-rich splicing factor 1)を代表として14種のRBPsと相互作用を示す可能性を見出した。
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