研究実績の概要 |
<目的①>リンパ節領域毎のリンパ球活性化を評価し、リンパ節転移の影響を評価する。 1, リンパ節中リンパ球の解析。現在までに44症例の胃癌サンプルの集積を行った。主腫瘍と1群リンパ節3個+2群リンパ節1個をサンプルリングし、各サンプルよりリンパ球を抽出し、FACS解析した。CD3, CD4, CD8を用いてCD4、CD8陽性T細胞をゲートし、各細胞上のPD-1、TIM-3、CD103などの免疫チェックポイント分子発現を評価した。現在までの結果では、非転移リンパ節、転移リンパ節、腫瘍の順にCD8陽性T細胞上の免疫チェックポイント分子発現が高値となり、逆に非転移の2群リンパ節は1群リンパ節に比較し同免疫チェックポイント分子の発現が低値あった。この結果より、リンパ節に転移を来すとCD8陽性T細胞が抑制され疲弊化し、さらに腫瘍に近い1群リンパ節では転移を来していない状況でも疲弊化の傾向を示すことが推測された。 2, リンパ節中樹状細胞(DC)の評価。同様のサンプルを用いて樹状細胞の評価を行った。樹状細胞はCD3, CD19, CD56, CD14を除外し、HLA-DR陽性細胞の中でCD11c陽性のmyeloid DC (mDC)とCD303陽性のplasmacytoid DC (pDC)に分類、さらにCD1c陽性のmDC2とCD141陽性のmDC1に分類した。分類したDCにおいてCD80, CD83, CD86発現による活性化評価を行った。リンパ節転移を来していないリンパ節においても、mDC上の活性化マーカーの低下がCD8陽性T細胞上のPD1発現上昇と関連する傾向を示している。 以上検討により、転移のないリンパ節でも腫瘍進展に従い免疫が抑制化され、リンパ節転移はさらにリンパ球疲弊化が誘導することが推測された。ヒトにおいて、リンパ節が免疫活性化・抑制化に重要な場であることが再確認された。
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今後の研究の推進方策 |
<目的①>症例集積を継続し、リンパ球の活性化・抑制化と樹状細胞のデータを固定化する。 <目的②>腫瘍内・リンパ節内エクソソーム上PD-L1の検出を試み、各部位のリンパ球活性化と比較検討し、腫瘍局所・リンパ節におけるエクソソーム上PD-L1の免疫抑制機序を解明する。 腫瘍・リンパ節サンプルで、FACSを用いてエクソソーム上PD-L1の評価を行うことを予定しており、使用する蛍光抗体はCD9, CD63, CD81, PD-L1, CTLA-4, TIM-3等を準備している。腫瘍内エクソソームの抽出においては、腎細胞癌腫瘍サンプルよりエクソソームを抽出する方法が報告されており(Jingushi, IJC 2017)、この方法を用いた抽出の条件設定も施行している。リンパ節でも同方法によるエクソソーム抽出が可能か検討する。エクソソーム抽出方が確立された段階で、ウエスタンブロッティング法によりPD-L1の分子評価を予定する。 <目的③>免疫抑制因子として、PD-L1以外の副刺激分子も同様にエクソソーム上に発現することが考えられ、他の分子(CTLA-4, TIM-3, ICOS, LAG-3, OX-40等)についても検討する。 目的②において各サンプルにおけるエクソソーム抽出が可能となった後にウエスタンブロッティング法によりPD-L1以外の他の分子評価を予定する。基本的にはPD-L1検出と同様の方法により検出可能と予想される。
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