研究課題/領域番号 |
20K17687
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
向山 順子 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (70734987)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 最適化治療 / 細胞系譜 / 内分泌細胞 |
研究実績の概要 |
本邦における大腸癌による死亡数は増加の一途にあり、死因の大半である転移や再発の克服が大腸癌の予後改善のための重要課題である。大腸癌の予後不良なサブタイプとして、腸管の発生や維持に不可欠なマスター遺伝子であるホメオボックス転写因子CDX2の発現が低下した大腸癌が注目されている。CDX2低発現大腸癌は通常は根治切除のみで経過が良好であるステージ2の病期でも極めて予後が悪く転移再発率が高い(Dalerba P et al. N Engl J Med 2016) 。一つの大腸癌組織にも多数のサブクローンが存在し、転移や治療抵抗性などの性質の決定に関わることが示されつつあり、CDX2低発現大腸癌の高い転移再発能の根幹にある分子機構の解明のためには、CDX2低発現大腸癌を構成する癌細胞の単細胞レベルでの解析が必要となる。 申請者はこれまでにCDX2低発現大腸癌のシングルセルRNA-Seq.解析を行うことで、同大腸癌がAPC遺伝子非依存性の独自の発癌機構や特有の細胞系譜をもつことを明らかにした。また、動物モデルと臨床検体のオミックス解析により、CDX2低発現大腸癌の発癌に腸管の慢性炎症が関与する可能性を見出した。本研究では、さらに機能評価や薬効試験など臨床応用を目指した解析を取り入れたトランスレーショナルリサーチを展開していく。本研究の成果は固形癌では初となる細胞系譜に基づく最適化治療の確立につながる可能性を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックの影響により、所属研究機関でも技術補佐員の勤務を制限するなど、研究遂行に支障をきたすことが重なった。また、共同研究機関である米国Columbia大学は長期で研究室が閉鎖になり、研究活動が停止した期間が長かった。 また、研究計画で予定していた大腸癌の臨床検体の解析は、例年と比較して手術件数が減少したために、研究対象とする大腸癌のサブタイプの臨床検体が十分に得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に進められなかった実験を2021年度に繰り越して進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックのために、前述のように研究計画の遂行に支障をきたすことが重なり、研究計画が大幅におくれたため。
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