近年、腸管の内分泌系細胞を起源にもつ大腸癌が、大腸癌の予後が不良なサブタイプとして注目されている。一つの大腸癌組織にも多数のサブクローンが存在し、転移や治療抵抗性などの性質の決定に関わることが示されつつあり、転移再発能の根幹にある分子機構の解明のためには、同大腸癌を構成する癌細胞の単細胞レベルでの解析が必要となる。
小腸上皮は吸収上皮細胞と内分泌系細胞(上皮内分泌細胞,杯細胞、Paneth細胞)、前駆細胞、幹細胞から構成される。しかし、現在広く用いられている細胞表面マーカーCD44やCD24による標識では複数の細胞集団の分離は可能であるが、高い純度で各細胞を特異的に分離する手法は確立されていない。そこで本研究では、マウス小腸からセルソーターにて腸管の上皮細胞の大半を占める吸収上皮細胞(EpCAM+/CD66high/CD44low)を除去した細胞集団(EpCAM+/CD66low/CD44high)の解析を行った。新規の細胞表面マーカーの組み合わせの同定により、腸管内分泌系細胞を特異的に分離することが可能であり、現在は各細胞集団のRNA-Seq.解析を進めている。
最終年度にあたる今年度は、多項目測定ELISAキットによる同大腸癌の新規バイオマーカーの同定を行った。具体的には、右側大腸癌患者の術前の血液サンプルの解析を行い、CDX2高発現大腸癌とCDX2低発現大腸癌で発現が異なる因子を明らかにした。
|