研究課題/領域番号 |
20K17688
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
柳生 拓輝 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (00867757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵がん / テロメラーゼ / 3p21.3 |
研究実績の概要 |
<研究目的> 本研究は、3番染色体短腕(3p)領域にLOH(Loss of heterozygosity)の頻度が多いことが知られている膵がんにおいて、同領域のLOHの機能的意義と同領域にコードされるがん抑制遺伝子を明らかにすることである。 <研究結果> 染色体導入法(微小核細胞融合法)を応用し、ヒト膵がん細胞株PK9とマウス膵がん細胞株LTPAに対し、正常ヒト3番染色体の導入をそれぞれ試みた。またコントロールとして4番染色体をそれぞれ導入した。PK9細胞において、4番染色体の導入株は樹立可能な一方で、3番染色体の導入では顕著な細胞形態変化、細胞増殖停止を生じ、クローニングが困難であった。LTPA細胞では3番・4番染色体株(LTPA#3・LTPA#4)はそれぞれ樹立可能であった。LTPA#3細胞は、親株であるLTPA・LTPA#4と比較して有意にmTertの発現が低下していた。またLTPA#3細胞は、細胞増殖能・浸潤能も有意に低下していた。任意の領域で削除した2種類の改変ヒト3番染色体(A; 3p21.3~qter、B; 3p21.1~qter)をLTPAへ導入した。Aを導入したクローンではLTPA#3同様にmTertの発現低下を認めたが、Bを導入したクローンでは発現は低下しなかった。またPK9細胞にBを導入したクローンは、3番染色体全長を導入した際と異なり、細胞形態変化は生じず、クローニングも可能であった。レポーターアッセイにより、LTPA#3はLTPAに比較してmTertプロモーター活性が低下していた。 これらの結果から膵がんにおいて3p21.3領域にテロメラーゼ抑制遺伝子(群)が存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね作業仮説の通り、染色体導入法を用いて膵がんにおける3p領域のLOHがテロメラーゼの活性化に関与している可能性を示すことができた。更にその責任遺伝子候補領域を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
レポーターアッセイの結果、ならびに3番染色体導入クローンをRNA-seqで解析することにより、3p21.3領域にコードされるテロメラーゼ抑制遺伝子(群)の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初計画していたRNA-Seqを実施しなかったため、次年度使用額が生じた。しかしながら実験計画としては概ね順調に経過している。また次年度は論文投稿を予定しており、その投稿費に使用する予定である。
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