【研究目的】本研究では、染色体導入技術を用いて、膵がんにおけるテロメラーゼ制御遺伝子を同定することを目的とした。 【研究方法】ヒト・マウスの膵がん細胞株にヒト正常細胞由来の3番染色体を導入した細胞を樹立し、テロメラーゼ活性の中心を担うTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)の発現抑制効果を検討した。 【研究結果】ヒト3番染色体を導入したヒト膵がん細胞は、細胞増殖が完全に停止し、β-galアッセイを行ったところ細胞老化を来していた。一方、Controlとして用いた4番染色体導入細胞ではそのような変化は見られなかった。ヒト3番染色体を導入したマウス膵がん細胞は、親株・4番染色体導入細胞と比較して、有意にTertの発現が低下し、細胞増殖能が低下していた。責任遺伝子候補領域を絞り込むために、任意の領域を段階的に削除した改変3番染色体をそれぞれマウス膵がん細胞株に導入したところ、短腕テロメアから3p22までを削除した場合は、3番染色体全長導入時と同じくTert発現低下を認めたが、短腕テロメアから3p21.3領域を削除するとTertの発現低下効果が見られなかった。またレポーターアッセイにおいて、ヒト3番染色体を導入したマウス膵がん細胞は、Tertのプロモーター活性が低下していた。 以上の結果により、膵がんにおいて、3p21.3領域上のテロメラーゼ抑制遺伝子(群)の存在が示唆された。
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