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2020 年度 実施状況報告書

p53発現腫瘍融解アデノウイルス製剤と既存化学療法との免疫学的治療効果の比較

研究課題

研究課題/領域番号 20K17690
研究機関岡山大学

研究代表者

橋本 将志  岡山大学, 大学病院, 医員 (10867477)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードウイルス療法 / 膵癌 / 免疫療法 / 腫瘍溶解アデノウイルス / p53
研究実績の概要

本研究は,膵がんに対するp53発現腫瘍融解アデノウイルス製剤(OBP-702)の抗腫瘍免疫を活性化する薬剤としての有用性を,現在使用される既存の化学療法と比較,併用し検証している.
In Vitroの実験では免疫原性細胞死のマーカーの一つである細胞外ATPの放出は既存化学療法に比べてOBP-702が有意な差をもって放出することがわかった.またp53から誘導されるGLS2やAIFといったタンパクがATPの産生メカニズムに関与していることも示唆された.より臨床デザインに近づけるため,膵癌の代表的な化学療法レジメンである,Gemcitabine+nab-Paclitaxel療法(GN)を比較だけでなく併用する実験モデルも検討した.GNの併用時もOBP-702はp53,E1Aの発現することができ,効果を発揮することがわかった.抗腫瘍効果では併用治療でシナジー効果を認め,アポトーシスマーカーのActive caspase3の上昇も認めた.

In Vivoの実験ではControl,GN,OBP-702,併用の4群において,PAN02両側皮下腫瘍モデルの治療実験を行った実験では,OBP-702のアブスコパル効果の発現と,GN群に対しても併用群でアブスコパル効果の上乗せが観察された.腫瘍のリンパ球解析においてもCD8+T細胞の増加,さらにCD8+,CD103+のレジデントメモリーT細胞の分画の増加も認められた.
最後に術前治療が主流となりつつある膵癌の臨床デザインを意識し,同4群において治療開始後一週間で腫瘍を切除し,30日後に腫瘍を再投与し無治療で経過を観察するRe-challenge試験を行った.この試験においても併用治療を行った群は有意差を持って腫瘍増殖抑制効果が認められた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していたIn Vitroの実験はおおむね終了した.免疫原性細胞死のマーカーとしてのHMGB-1やCalreticulinについてはOBP-702の有意性を示すことは難しかったが,ATPについては予想通りの結果が得られた.さらにp53と細胞外ATPの関係の解析まで進むことができた.またGemcitabine+nab-Paclitaxel療法(GN)との併用におけるシナジー効果の検討まで進めたことは当初の予定より大きく踏み込んだ内容まで解析することができている.In Vivoの実験においても当初予定していた両側皮下腫瘍モデル,術前治療モデルの療法において単剤比較のみならず併用においても治療効果を認める実験結果を出すことができ,さらに免疫による治療効果の上乗せも見られおおむね予想通りの結果を得ることができている.

今後の研究の推進方策

今後は上記で得られた治療結果がどのようなメカニズムで生まれているかを解明する.特に腫瘍内のレジデントメモリーT細胞の増加がOBP-702治療によって起こっているかどうかを解析する.またATPの上乗せによる免疫学的治療効果の上乗せについての解明に取り組む.具体的にはA-438079を使用し,細胞外ATPのレセプターである,P2RX7レセプターを阻害した治療実験を行い,免疫プロフィールの変化を検討する.

次年度使用額が生じた理由

残金が半端になったため使い切ることができなかった.次年度はInVivoの実験を中心として動物実験用動物,抗がん剤治療薬,P2RX7レセプター阻害薬などの費用や,InVitroの抗体に費用を充てる予定.

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公開日: 2021-12-27  

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