研究課題
本研究は、癌幹細胞(Cancer stem cell: CSC)を標的とした治療方法の開発による胃癌の播種再発抑制を目的とする。胃癌の術後再発の約半数は腹膜播種であり、その予後は不良で播種に対する新規治療の開発は急務である。CSC は腫瘍新生能や転移能、治療抵抗性を持つことで、癌の再発、転移に関わっているとされている。我々は独自の方法で胃癌細胞株からCSCの特徴であるsphere形成細胞を誘導することに成功し、その細胞が腹膜播種を高頻度で引き起こすことを発見した。本研究では胃癌腹膜播種の分子機構を明らかにし、有効な治療ターゲットとなる遺伝子発現を同定することを目的としている。計画していた臨床検体の問題が判明したことから、細胞株での解析を主として研究を進めた。胃癌細胞株としてMKN7, MKN45, KATO_III細胞株を用いて独自sphere誘導培地 (SIM) におけるsphere形成能を評価した結果、MKN45はcancer stem-like sphere cell (CSLC) 形成株であった一方、MKN7はCSLC非形成株であった。抗癌剤耐性能 (5-FU, CDDP, CPT-11) について通常培地下とSIM下において評価した結果、MKN45はSIM下において5-FUおよびCPT-11に対して有意な耐性化を認めた。CSLC非形成株であるMKN7では上述の抗癌剤耐性化は認められなかった。さらに、RNA-seqおよびGene Set Enrichment Analysisを行い、CSLC形成によって特異的にenrichされた特徴を探索した。その結果、これまで我々が肝癌CSLCから得ていた結果と同様に上皮間葉系移行や低酸素が特徴として得られた。さらに、肝癌CSLCにて転移と関係するN細胞からの逃避機構として示されたHLAやMICA/B発現の上昇も示された。
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