研究実績の概要 |
光線力学療法(Photodynamic therapy: PDT)は、光増感剤(Photosensitizer: PS)である腫瘍親和性物質を体内に投与し、病変部に特異的な波長のレーザーを照射することで活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)を発生させ、癌細胞を酸化壊死に導く治療法である。本研究は近年in vitro実験で報告されている癌細胞の化学療法に対する耐性軽減効果に着目し、抗癌剤と併用療法に最適化した独自のPDT療法の樹立を目的とする研究である。 初年度である令和2年度は、これまでに当院で施行された化学放射線療法後局所再発病変に対するPDT療法後のヒト食道癌生検組織 (n=32, うち1次耐性n=9, 2次耐性n=5)、及びそのコントロールとしてPDTを施行せずに外科的切除を行ったヒト食道癌組織 (n=27)を用いて、免疫組織染色で薬剤耐性トランスポーター発現の評価を開始した。 一次抗体としてAnti-P Glycoprotein antibody, JSB-1, (Abcam)とAnti-BCRP, BXP-21 (Merck)を購入し、それぞれのoptimizationを行い、種々の条件で実験を繰り返し最適なprotocolを検証した。P-Glycoprotein (ABCB1)はヒト正常肝組織において、クエン酸バッファー下オートクレーブでの賦活化、overnightで1次抗体をincubateし、DAB/Ni/Co/H2O2溶液でVisualizeし、細胞膜に染色が得られた。BCRP (ABCG2)はヒト食道癌組織において20倍希釈の1次抗体を用いた、同様の賦活化、Visualizationで細胞質での染色が得られた。この条件にて臨床サンプルを用いた免疫染色法を実施し、これまでに非PDT施行群10症例分を終了した。
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