癌の進展には転写因子NF-κBを介した炎症のメカニズムが密接に関与していることが知られていが,既存の抗NF-κB阻害薬は副作用が強いことが課題として挙げられる.抗炎症作用を有するハナショウガ由来の天然化合zerumboneに着目し,消化器癌に対するzerumboneの抗腫瘍効果の検討を重ねてきた.in vitroにおいて、zerumboneは転写因子NF-κBの活性を低下させ,血管新生因子であるIL-8およびVEGFの産生 を制御し,腫瘍血管新生を抑制することを報告した.しかし,消化器癌に対するzerumboneの動物実験の報告は少なく,その臨床効果および副作用は未知である.本研究では,in vivoにおいて,消化器癌に対するzerumboneの抗腫瘍効果を検討することを主目的とした.さらにzerumboneの生体組織への影響やその副作用についても検証を行った. 膵癌細胞株を皮下移植したモデルマウスを作成し,Zerumboneの腹腔内投与をおこなった.コントロール群では,皮下移植した腫瘍径は経時的に増大傾向を認めた.一方,Zerumbone投与群は高用量および低用量にわけて投与をおこなったところ,どちらの群も腫瘍径は有意に抑制された.しかし,Zerumboneの用量との関連は認めなかった. また,マウス体重に差は認めなかったが,腫瘍重量においても有意に抑制を認めた.一方で,腎重量や肝重量には群間差を認めず,Zerumboneによる肝・腎障害は低い可能性があることが推測された. 予備実験的に少数のマウスで実験を行っており,nを再検討が必要であるため,今度再実験を予定している.また,胃癌細胞株を用いた実験については結果が安定して得られていないため,いまだ結果を得られていない.
|