本研究では,胃癌,食道癌などの消化器癌を対象として,ユビキチン修飾系異常を介した癌の進展機序を包括的に解明し,新規癌治療法としての有用性・安全性を検証し,臨床導入の早期実現を目的とする.まず食道癌細胞株(TE-6,TE-8)における遺伝子発現を確認したところ,細胞集団と単一細胞の間に大きな差が存在し,細胞間のheterogeneityが非常に大きいことが確認された.そのため当初予定していたbulkでの解析から,単一細胞由来の遺伝子発現解析に基づいた機序解明が必要と考えた.細胞株に関しては,親株を限りなく単一クローン由来となるように作出し,同様の手法で化学療法耐性株も準備した.培養細胞だけではなく組織標本における微小領域からの遺伝子発現解析も必要であり,そのライブラリー作成のためのcDNA合成法の確率にも着手した.ホルマリン固定した培養細胞に対しては既存のsingle cell RNA-seqの工程に,クロスリンクされた核酸-タンパク質間のタンパク質分解および熱処理によるmethylene架橋の解離を導入することで核酸の可溶化が可能となり,cDNA合成が可能となることが確認できた.
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