研究課題/領域番号 |
20K17701
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
兼田 裕司 自治医科大学, 医学部, 助教 (00600868)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵液瘻 / 膵切除術 / 膵体尾部切除術 / 自動縫合器 |
研究実績の概要 |
本研究では、膵液瘻予防効果における膵断端処置具の自動縫合器法に対する優位性を検証すること、本器具や自動縫合器法が膵に与える病理学的変化を評価し、膵液瘻の病態解明に繋げることを目的とする。研究実施計画に従い、以下の実験を行った。 【耐圧能比較試験】(方法)摘出したブタの膵臓を用いた。(i)本器具で膵臓を結紮後、切離した(10例)。(ii)自動縫合器で膵臓を切離した(10例)。主膵管内に留置したカテーテルに造影剤で圧を掛け、膵断端からの造影剤漏出をX線透視で確認しながら耐圧能を測定した。(結果)本器具使用例では造影剤漏出を認めず、自動縫合器法ではステイプルによる膵管損傷、造影剤漏出を認めた。本器具と自動縫合器法の耐圧能中央値はそれぞれ43mmHgと34mmHgで、本器具の耐圧能が有意に高値であった。 【慢性実験】(方法)(i)超音波で膵尾部への血流を確認しながら本器具で膵臓を結紮後、切離した(3例)。(ii)自動縫合器で膵臓を切離した(2例)。1週間後にCT検査、剖検を施行し、膵液瘻の有無、病理学的所見を評価した。(結果)(i)本器具使用例では3例ともCTで膵周囲に液体貯留を認めず、剖検でも膵液瘻、膵断端壊死を認めなかった。(ii)自動縫合器法では膵断端の液体貯留(Amy値23万 U/L)を1例認め、膵液瘻と判断した。病理学的検討では、本器具により結紮部位から膵断端の膵管は狭小化しており、膵管の物理的な狭窄により膵液瘻が予防されたと判断した。自動縫合器法では、ステイプルによる膵管損傷、血管損傷を認め、膵液瘻の原因と判断した。 本器具の耐圧能は自動縫合器より高く、膵管損傷のリスクも低い。さらに、膵断端への血流を温存しながらの結紮が可能であるため膵壊死リスクを抑制できる。本器具は膵断端閉鎖法の新たな選択肢として期待できる。今回得られた知見をもとに、現在は学会発表、論文作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に予定していた耐圧能比較試験、慢性実験は概ね予定通り進み、膵断端処置具の膵液瘻予防効果の検証、病理学的評価が進んでいる。また、それらの実験結果を元に、膵断端処置具の改良を行っている。よって、本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は慢性実験(1週間)による膵液瘻予防効果の比較検討を継続し、現在所有するデータと共に、統計学的に比較検討する方針である。また、病理学的検討も継続し、本器具と自動縫合器による、膵臓の虚血性変化、病理学的変化を評価し、膵液瘻の病態解明と至適結紮強度の同定に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた実験を2020年度内に開始するために、前倒し支払い請求を行った。その実験のためのブタを購入する予定であったが、他実験で使用した実験ブタを使用することができたため、実験費用を抑えることができ、次年度使用額が生じた。2021年度はこの次年度使用額により、新たな慢性実験を追加する予定である。
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