研究課題/領域番号 |
20K17702
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
古城 憲 北里大学, 医学部, 助教 (20525414)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / プロスタグランジン / リンパ管 |
研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎とクローン病を含む炎症性腸疾患に罹患する患者数は年々増加し、2018年には30万人の新規患者が登録された。さらに生物学的製剤やJAK阻害薬などの治療薬の開発導入により治療の選択性が増える一方、治療選択には十分な経験がさらに必要となっている。炎症性腸疾患における粘膜損傷程度は重症度により異なるが、粘膜組織下に新生するリンパ管の寄与については十分な解明はなされていない。本研究では炎症性腸疾患でみられるリンパ管新生の意義とその制御機構を明らかにして、粘膜損傷における炎症収束の標的となりうるかどうかを実験モデルを用いて調べた。マウスにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を経口投与することで潰瘍性大腸炎モデルを作成した。本研究では新生リンパ管が粘膜修復にどのように関わるかについて焦点をあわせるために、2%DSSをマウス(B6)に5日投与後、その後の9日間は自由飲水とさせて合計14日間観察した。この実験プロトコールによって、腸炎の活動スコアー(体重変化、便性状など)は7日目に最低となるが14日目には前値に回復した。従って急性大腸炎から回復したものと考えられた。このときのリンパ管を評価するとリンパ管密度およびリンパ管面積は増加し、またリンパ管新生因子やリンパ管内皮マーカー発現も増加した。また、損傷粘膜も修復過程にあった。すなわち、急性大腸炎後の粘膜修復とリンパ管新生には関連性が示唆された。リンパ管内皮はリンパ管新生因子の受容体であるVEGFR3によって増殖するために、VEGFR3阻害薬を用いた。投与時期は炎症がピークになる直前の5日目から残りの9日間とした。VEGFR3阻害薬によってリンパ管新生は抑制されただけでなく、急性大腸炎からの回復も遷延した。従って、リンパ管新生は粘膜修復に寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されている。潰瘍性大腸炎実験モデルにおいて粘膜組織下に形成される新生リンパ管は粘膜修復に寄与する可能性をみいだすことができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画に沿って、本研究を進めていきたい。とくにプラスタグランジンがリンパ管新生にどのように関与するのかを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウトマウスの繁殖が想定通りにいかなかったこと、また購入予定であった消耗品の納入が間に合わなかったこと、学会がオンライン開催となったことから旅費を使用しなかったことなどのために次年度に繰り越した。
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