研究課題/領域番号 |
20K17703
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
富田 晃一 東京医科大学, 医学部, 助教 (10647267)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / 唾液 / メタボローム / ポリアミン |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は、膵癌の早期発見を目標とした唾液のメタボローム解析である。メタボローム解析は代謝物質の研究で、担癌患者体液中の代謝径路を網羅的に解析し、癌の発生・増殖・転移等に関連する特徴的な代謝物質を同定する手法である。唾液は他の体液に比べて低侵襲・低コスト・安全な収集ができ、医療機関でなくとも被験者が自分で採取できるため、高頻度な検査を行っても被験者の負担をかけない。このような点から、マススクリーニ ングに有用であると考えられる。研究協力者の過去の研究で、膵癌の早期発見に繋がる可能性のある幾つかのポリアミン類が質量分析装置で同定できた。これらを用い膵癌のマススクリーニングを可能にするため、候補となるポリアミン類から相関性の高い物質に狙いを定め、候補物質に対するモノクローナル抗体を作製してイムノクロマトアッセイによる簡易測定キットを開発したいと考えている。なお膵癌に付随して、消化器領域を中心とした複数の癌種についても同時に研究を進める予定でいる。 現在、胃癌や膵癌を含む複数の癌種で標的ポリアミンの候補を2種類同定した。またそのモノクローナル抗体を作成し、イムノクロマト法により抗原濃度に依存して吸光度が変化する事を確認した。標的ポリアミンについては、モノクローナル抗体を用いたイムノクロマト法と質量分析法との相関を一部確認し、両者の相関係数が一定以上である事が認められた。また標的ポリアミンについてイムノクロマト法による吸光度では、乳癌を除く5つの癌種において健常者と有意な差が認められた。また癌の進行度(ステージ)と連動して吸光度も増減する傾向がある事が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の研究の進捗状況は概ね順調であると考えている。当初予定していた研究計画では、1. 唾液メタボローム解析の結果から得られた膵癌のポリアミン候補のうち、早期診断に繋がり、かつモノクローナル抗体が作製可能な標的ポリアミンを決定する(2020年度)。2. 標的ポリアミンのモノクローナル抗体を作製する(2020年度)。3. 作製されたモノクローナル抗体を用いて、簡易測定キットを開発する(2021年度)。4. 開発した簡易測定キットを用いて、実際の膵癌患者での臨床評価を行う(2021年度)。としていたが、2020年度の目標については研究協力者の尽力もありほぼ到達できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後標的ポリアミンについて、モノクローナル抗体を用いたイムノクロマト法と質量分析法との相関を確認し、イムノクロマト法の妥当性を更に検証する予定である。また実際の各種癌患者および健常者の唾液検体を用いて、イムノクロマト法における吸光度の至適カットオフ値をROC解析により求めたいと考えている。そのカットオフ値を用いて簡易測定キットの開発を進める事を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今のCOVID-19の蔓延およびそれに対する人の移動制限に伴い、打ち合わせや学会等の多くがオンライン上で行われるようになり、出張費用等が想定より少なかったため差額が生じた。次年度は本研究の中で測定キットの開発や臨床での評価を行う予定であり、予定通り使用予定である。
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