本研究では、極めて予後不良である膵臓癌に対して治療成績の改善のために早期発見を目的とした新たな検査キットの開発を試みている。
膵臓癌は悪性疾患の中でも最も治療成績が悪く、本邦の直近の全国データでも5年生存率は10%を下回る。膵臓癌の治療成績が不良な要因は幾つかあるが、例えば症状に乏しく早期発見が困難で、診断時には既に進行しており外科的切除の適応にならない場合が少なくない。また仮に切除に至った場合でも術後再発率は非常に高く、根治が難しい点が挙げられる。これらの問題点に対して外科的切除の技術向上などでは治療成績改善は見込めないため、近年では様々な新規の化学療法が開発されており、それに伴いこれまでよりも徐々に予後が延長する傾向が見られている。
その一方で、外科的切除や化学療法などの治療手段の是非とは別に膵臓癌のような悪性疾患の予後を改善するためには、早期発見が非常に重要である。早期発見する事によって早期の治療に結びつくと共に、根治の可能性が高まったり病勢を抑えられる期間が延長する。現在膵臓癌の早期発見を目指して様々な側面から研究が活発に行われているが、我々は担癌患者の唾液中に含まれるポリアミンを対象とした唾液メタボロームによるキットの開発を目指している。これまで試験的に開発されたキットを用いて実臨床の膵臓癌患者に対して使用を開始したが、本年度も引き続き国内の医療機関で順調にデータを集積中である。また並行して、本研究の発展のために今後海外で臨床試験を行う事を検討しており、本年度はその準備も行なった。
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