本研究では「人工心肺で生じる回路圧上昇は、白血球由来DNAが引き起こす」と仮説を立て、臨床症例を対象として仮説を検証し、回路圧上昇のメカニズムを解明する。本研究は、次の3つのステップで研究計画を立てている。 研究の第一段階(ステップ1)として、過去に当院で人工心肺を使用して心臓手術をおこなった症例を対象に、手術前および手術中のデータを収集し、それらを後方視的に解析する。現在までに、人工心肺を使用した弁手術を対象とし、おおよその目標症例数のデータ収集が終了した。対象となったのは130名であり、Primary outcomeとして回路圧上昇の程度と白血球の関連について解析した。また、白血球のみならず、回路圧上昇の程度と白血球以外の因子との関連についても同定するべく、さらなる解析を実施した。解析結果は日本心臓血管麻酔学会第28回学術大会で発表し、現在は論文作成をしているところである。 研究の第二段階(ステップ2)として計画している前向き研究では、人工心肺を使用して心臓手術をおこなった症例を対象として、人工心肺使用前、使用中、使用後の血液中の細胞外DNA値を測定する予定である。前向き研究として当学の倫理委員会の承認を得たが、現在までに研究を開始できていない。 研究の第三段階(ステップ3)として、回路圧上昇が生じた症例の人工肺を分解し、人工肺に付着している物質を解析することを予定している。しかし、現在までに当院で回路圧が上昇した症例は認めておらず、解析できていない。
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