研究課題/領域番号 |
20K17706
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加藤 秀之 筑波大学, 医学医療系, 講師 (00813643)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺静脈狭窄 / 内皮間葉移行 / TGFβ / ラットモデル / EndMT |
研究実績の概要 |
肺静脈狭窄症は難治性の疾患であり、発生メカニズムも明らかになっていない。今回の研究ではラットを用いて今まで確立していない肺静脈狭窄モデルを作成し、肺静脈狭窄のメカニズムの解明、内皮間葉移行(EndMT)の関与と新しい治療法の開発を目標とする。 1年目の研究目的はラットの肺静脈狭窄モデルの確立であり、下記の研究計画を立てた。ラット肺静脈狭窄モデル作成(パイロット研究、下記グループ①と④のデータ収集、解析) 生後8-10週のラットを用いて肺静脈狭窄モデルを作成する。最初はパイロット研究として10匹のラットを準備。麻酔機器(吸引麻酔イソフルラン、人工呼吸器)、手術器具(As one 1-8278-01 極小鉗子等付き)を用いてラット静脈狭窄モデルの確立を目指す。 <バンディング手技>全身麻酔下にラットの第4肋間で側方開胸。肺静脈を同定しその左房への流入部に非溶解糸(4-0絹糸)または溶解糸(4-0 Mnocryl)でバンディングをかける。1週間あけて対側のバンディングを行う。以下のグループに分けデータを収集する。①両側(非溶解4-0絹糸)バンディング(n=10) ②溶解する糸(溶解糸Monocryl)での両側バンディング(n=10)Monocrylは生体内で2週間で残留抗張力が20-30%になるため、2週間以降ではバンディングが解除された状態になる(2年目の主課題) ③両側バンディング後(非溶解4-0絹糸)のTGFβ受容体阻害薬投与(n=10)TGFβ受容体阻害薬はSB-525334を使用しバンディング後3週から投与を開始する(3年目の主課題) ④コントロール(n=10)バンディング同様の手技は行うがバンドはおかずに閉胸する。しかし、手術手技の難易度は高くかつ熟練した技術が必要なため、まだモデル確立には至っていない。道具の工夫や経験を増やし2年目もモデル確立をまず目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺静脈狭窄モデルはラットではまだ確立したものがなく(ブタでの肺静脈狭窄モデルは以前に達成している。Pulmonary vein stenosis and the pathophysiology of‘‘upstream’’ pulmonary veins. Kato. et al. J Thorac Cardiovasc Surg 2014;148:245-53)、手術手技に熟練を要する。加えて小動物の繊細さもあり安定したモデルの確立には至っていない。道具の工夫、麻酔の工夫などを行っていき安定したモデルの確立をめざしていく。
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今後の研究の推進方策 |
手術手技の工夫、道具の工夫、麻酔の工夫をしていき安定したモデルの確立を目指す。 モデルの確立後、以下のグループに分けデータを収集する。①両側(非溶解4-0絹糸)バンディング(n=10) ②溶解する糸(溶解糸Monocryl)での両側バンディング(n=10)Monocrylは生体内で2週間で残留抗張力が20-30%になるため、2週間以降ではバンディングが解除された状態になる(2年目の主課題) ③両側バンディング後(非溶解4-0絹糸)のTGFβ受容体阻害薬投与(n=10)TGFβ受容体阻害薬はSB-525334を使用しバンディング後3週から投与を開始する(3年目の主課題) ④コントロール(n=10)バンディング同様の手技は行うがバンドはおかずに閉胸する。 バンディング後6週間の時点をエンドポイントとし血行動態、圧を測定後、心肺組織、肺動静脈を採取する。●経胸壁心エコー :バンディング前、バンディング施行後3週間、6週間で行う。右室負荷、肺高血圧、三尖弁機能、心機能の測定。●血行動態・圧測定:バンディング施行後6週間で行う。胸骨正中切開により心臓を露出し心尖部からのカテーテル挿入にて右室圧、肺動脈圧を測定。●Western-blot analysis:各肺静脈から抽出したタンパクをWestern-blotにかけて内皮(CD31)および間葉マーカー(α-SMA)、TGFβの発現を定量的に調べる。CD31,α-SMA,TGFβの試薬購入。●遠隔部肺静脈の摘出・HE染色・蛍光染色:肺静脈のHE染色および蛍光染色をし各マーカーの発現をみる。肺静脈バンディング群における遠隔部の肺静脈の内皮1層構造は破壊、線維芽細胞の増生による内膜肥厚を検証する。以上を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
肺静脈狭窄のラットモデルは確立されておらず、手術手技に熟練を要する。1年目は手術手技の難易度から準備・計画にあてており、主な使用額はない。次年度に繰り越し研究を進めていくため差額は次年度使用額に当てられている。次年度は高度手術の精度を上げるために拡大鏡や手術器具の購入(約30万円)、麻酔薬/鎮静薬の購入(約10万円)、実験用ラットの購入(約30万円)、検査試薬の購入(約30万円)に繰り越し金額を当てる予定でいる。
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