研究課題/領域番号 |
20K17707
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
諫田 朋佳 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (20836126)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | vector flow mapping / cardiac output / Echo cardiography |
研究実績の概要 |
経胸壁心エコー図装置から画像データを抽出するためのEcho PAC PCソフトウェアのバージョン更新の問題があったが、循環器内科心エコー検査室の協力により、更新を完了してデータ抽出が院内の端末で可能となった。経胸壁心エコー図画像からVector Flow Mappingを用いて心拍出量を測定し、スワンガンツカテーテルで測定した心拍出量と比較する前向き試験について、国立大学法人千葉大学臨床研究審査委員会での承認を受け、試験を開始している。試験の実施にあたっては、臨床研究等提出・公開システム(jRCT)に登録して公開した。臨床研究実施計画番号はjRCT1032210381である。2023年度は全世界的にあらゆる分野の医療材料において原材料不足による供給不足があった。スワンガンツカテーテルも同様に材料不足から入手困難となったため、供給の回復を待機しているところである。エドワーズライフサイエンス社製以外で、代替できるスワンガンツカテーテル製品の検討を行った。しかしながら、当院のモニター環境に対応した製品は存在しなかった。代替策として、熱希釈法による連続測定ではなく、冷水ボーラス法による単回測定を繰り返す方法を検討した。これを実現するため、手術室や集中治療室でボーラス法による心拍出量測定行うための環境について検討した。手術室、病棟に設置されているモニター装置でボーラス法を行うためには、カテーテルに水温条件を入力するためのドングルが必要であったが、このモニター装置でボーラス法を行うのは古典的な方法であるため、すでにこのドングルは製造が中止されていた。メーカー在庫も払底している状況であるが、他施設で使用されていないものを融通してもらうよう調査中である。以上のように、研究継続に際して課題を生じているが、代替方法を検討しており、2024年度は必要な機器を準備して研究を再開できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を実現するために、麻酔科、循環器内科、臨床試験部、ソフトウェア開発会社、心エコー図機器製造会社などとの協議を必要とした。それぞれの協議については各部署の多大な協力を得て、順調に進めることができた。しかしながら、全体として調整には多大な時間を要し、研究進捗に遅れを生じてしまったことは否めない。また、折しも新型コロナウイルス感染症の流行に対する対応により、日常臨床業務の負担増大を来たしたことや、検査や手術の制限が行われた。感染拡大防止のために対面会議からオンライン会議への変更に対応する必要があったことなども進捗の遅延に影響を与えたと考えられる。また、当院では手術時のスワンガンツカテーテルの使用について、患者の安全の観点から、適応を明文化し、さらに多職種カンファレンスの場において慎重に検討することとした。従来よ りもカテーテル使用患者が減少しているため、今回の臨床試験の対象者が減少傾向になっていることは研究の進捗に影響を与えている可能性がある。また、研究の技術的な問題については、エコー装置から画像データを抽出するためのEchoPAC PCソフトウェア(GEヘルスケアジャパン社)のバージョン更新があった。当院に導入されている旧バージョンのソフトウェアでは当院のエコー装置からvector flow mappingに必要なraw dataが抽出できないことが発覚した。また、新バージョンのソフトウェアにもraw dataが出力できない欠陥があることが今回の検討で判明した。この問題の解決のため、GEヘルスケアジャパン社に依頼して新バージョンソフトウェアの欠陥を修正した。また、当院のソフトウェアを新バージョンに更新した。また、集中治療室に設置した心エコー図機器の故障があり、修理 に時間を要した。また2023年度初頭より原材料不足によりスワンガンツカテーテルの供給が滞っており研究に遅延を生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主たる技術的な問題点については、前述のとおりEchoPAC PCソフトウェア更新に伴う不具合と、研究の作業効率の悪化であったが、ソフトウェアの不具合は2021年度に我々の指摘ののち、GEヘルスケアジャパン社により改善された。また、2022年度は新バージョンのソフトウェアを当院心エコー検査室に導入することができた。また、当院における常設の経食道心エコー図装置はGEヘルスケアジャパン社,富士フイルムヘルスケア株式会社以外の機種である。現状ではvector flow mappingを利用するためには上記2社のエコー装置が必要であるため、2021年度の事前検討では富士フイルムヘルスケア株式会社からデモ機を借りてのテストを行った。読み込み可能な機種が制限される問題に対しては、vector flow mappingソフトウェアの改善に取り組んでいる。今後GEヘルスケアジャパン社以外で製造された心エコー図検査装置からのデータ形式も直接読み込めるように、ソフトウェア開発元のCardio flow design社にソフトウェア開発を依頼した。結果、いまだ開発中で画像の不鮮明な部分があるが、データを読み込めるようになりつつある。これらの取り組みの結果、臨床試験を開始することができた。また、エコー機器の故障が生じて研究の大きな支障となっていたが、修理を完了した。2023年度は原材料不足によりスワンガンツカテーテルの供給が滞ったために研究に支障を来した。代替製品の選定や、ボーラス法による計測を集中治療室で行うための環境整備などを検討中である。これらの諸問題への対応が進めば、本研究は推進可能であると考える。令和6年度は、データ収集を完遂し、VFMによる心拍出量測定方法の妥当性の検討を行い、続いて、改良したモデルによる実証を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究のデータ収集開始のために必要な倫理委員会への手続き等が遅延していたが、その後臨床試験を開始することができており、また本研究を推進するための環境は改善されつつある。2022年度は心エコー図機器の故障に見舞われて研究推進に遅延を生じたが、次年度以降はデータ収集を完遂し、VFMによる心拍出量測定方法の妥当性の検討を行い、改良したモデルによる実証を行う計画である。今年度研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額が異なったが、研究計画に変更はなく、次年度使用額も含めて当初の予定通りの計画を進めていく。
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