Arteriogenesisは径が太い側副血管の誘導を指し、重症下肢虚血に対する有効な治療効果が期待される。本研究では下肢虚血ラットモデルに対するNotchシグナル遺伝子改変間葉系幹細胞移植において、虚血肢にArteriogenesisを誘導し組織血流を改善させることを仮説とした。Sprague-Dawleyラットの左後肢大腿動脈を結紮し下肢虚血モデルを作成した。虚血誘導後1週目に1×105個のNotchシグナル遺伝子改変間葉系幹細胞(SB群、n=13)およびPBS(コントロール群、n=12)を筋肉内に投与し、その後4週間目までにレーザードプラー血流計を用いて虚血下肢の血流量(虚血肢/健側肢×100%)の評価を行った。その結果、SB群の虚血肢の組織血流の有意な改善を認めた(血流量,SB群:69±13% vs.コントロール群:56±13%,p=0.03)。さらに、治療4週間後の組織学的検討ではαSMA/vWFの陽性かつ径が15μm以上の血管数(arterioles,12±3/mm2 vs.5±1/mm2,p<0.01)は有意な増加を認めた。さらにin vitroで血管内皮細胞をNotchシグナル遺伝子改変間葉系幹細胞と共培養し、その遺伝子発現をRNAシークエンスにより解析した。その結果、血管内皮細胞においてNotchシグナル経路に加えて、fluid shear stressに関する経路などArteriogenesisを誘導する可能性のある複数の経路の発現増加を認めた。下肢虚血ラットモデルに対するNotchシグナル遺伝子改変間葉系幹細の投与はArteriogenesisを誘導し、虚血肢の血流を改善させることが示唆された。
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