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2020 年度 実施状況報告書

遺伝子改変ゼブラフィッシュによるPGE受容体EP4に着目した大動脈瘤治療薬の探索

研究課題

研究課題/領域番号 20K17730
研究機関東京医科大学

研究代表者

谷藤 章太  東京医科大学, 医学部, 助教 (50529245)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードゼブラフィッシュ / プロスタグランディン受容体 / EP4 / 腹部大動脈瘤
研究実績の概要

腹部大動脈瘤 (AAA)で多く産生されているPGE受容体EP4について、疾患進行に関与するEP4発現亢進の分子機序を解明し、AAAに対する新規治療法としてEP4発現を抑制する化合物を探索することが目的である。ゼブラフィッシュをモデルとして使用し、①EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュ作製、②アンジオテンシンII (AngII)負荷によるAAAモデル作製を試みた。
①では、ゼブラフィッシュEP4bのプロモーター候補領域をTol2ベクターに導入したコンストラクトを作製し、野生型受精卵に注入した。受精後1日目および5日目に実体顕微鏡で観察した結果、EGFPを発現した個体 (F0)を確認できた。F0と野生型を交配させて得られた個体 (F1)でもEGFPが発現していた。AAA発症の起点となるEP4過剰発現の誘導メカニズムについては現在まで未解明であり、作製したレポーターゼブラフィッシュを用いることでEP4発現を制御する分子機序の解明が期待できる。
②では、血管をEGFPで可視化したゼブラフィッシュの1細胞期受精卵にAngIIを注入し、受精後5日目に共焦点顕微鏡で観察して大動脈径を測定した。AngII投与群では大動脈径が有意に増大し (対照, 19.1±0.8; AngII 80 ng, 22.0±0.5; AngII 160 ng, 23.2±0.7; マイクロメートル, n=13-18)、測定した5か所間での差異はなかった。AngII 160 ng投与群に、弾性線維をつくる酵素であるリシルオキシダーゼの阻害薬を受精後2日目より投与した結果、発育異常により大動脈径への影響は評価できなかった。現在までに大動脈瘤の詳細な病態を評価したモデルゼブラフィッシュは存在せず、今後AngII投与群での血管変形や弾性線維異常の評価により、新規AAAモデルとしての可能性を見出すことが期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①では、EP4bプロモーター候補領域を含む長さの異なるインサートDNAを導入したコンストラクトを作製し受精卵に注入した結果、2種類のどちらのコンストラクトでも遺伝子導入したゼブラフィッシュでEGFP蛍光を観察できた。また、遺伝子導入したゼブラフィッシュの中から生殖細胞系列に導入されている個体を同定し、それらの個体と野生型の交配からF1世代のEP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュが得られた。現在は系統を樹立するためにF1世代の個体数を増やして各個体のEGFP蛍光のパターンを確認しており、おおむね順調に進展している。
②では、受精後5日目のAngII投与ゼブラフィッシュでの大動脈径増大を示すことができたが、リシルオキシダーゼ阻害薬併用による大動脈径増大の促進は見られなかった。この結果は、マウスで報告されているAngIIとリシルオキシダーゼ阻害薬併用による大動脈瘤の増悪とは異なり、予想に反したものであった。血管弾性線維の変化を組織染色で確認するには受精後5日目の個体では小さく困難であるため、成長後のAngII投与ゼブラフィッシュで血管弾性線維の異常が見られるかを確認する予定である。やや進展が遅れているものの、受精後2か月経過したAngII未処理個体の組織染色では血管弾性線維を確認できており、現在はAngII投与後の個体を継続して飼育している。

今後の研究の推進方策

本年度は、①ではEP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの系統を樹立する。F1世代の個体のEGFP蛍光パターンを確認後、発達に応じたEP4とEGFPのmRNA発現に相関があるかを検討する。また、臓器別の各mRNA発現についても同様に検討する。作製したEP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュを用いて化合物ライブラリー (LOPAC1280、Sigma)のin vivoスクリーニングを行い、EP4発現へ影響を及ぼす化合物を見出す。化合物ライブラリーには各種受容体の作動薬・拮抗薬や、キナーゼ・プロテアーゼ等の酵素活性を制御する物質などの様々な作用機序を持つ化合物が含まれているため、EP4発現を制御する分子機序の候補を様々な細胞内シグナル伝達経路の点から検討する。EP4発現を制御する分子機序を同定できれば、EP4発現を抑制する化合物の探索が可能となる。
②では、AngII投与ゼブラフィッシュが生体となった後に、大動脈径の増大が見られるか、大動脈血管の形状に変化が起きているか、血管弾性線維に異常が見られるかを、組織染色により検討する。新規のAAAモデルゼブラフィッシュとして確立できれば、①で見出したEP4発現へ影響を及ぼす化合物の効果をin vivoで検証することが可能となり、AAAに対する新規治療薬の開発に貢献できると考えられる。

次年度使用額が生じた理由

EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの作製はおおむね順調に進展しているが、F1世代の個体数を増やして飼育するのに時間がかかるため、化合物ライブラリー等のスクリーニング関連の消耗品が未購入である。また、AAAモデルゼブラフィッシュの作製実験で検討したリシルオキシダーゼ阻害薬の効果が予想と異なっていたため、AngII投与後のゼブラフィッシュを長期間飼育する必要が生じ、組織学的変化を検討するための消耗品が未購入である。当該年度に参加・発表した第126回日本解剖学会総会全国学術集会・第98回日本生理学会大会合同大会がWeb開催に変更されたため、国内旅費が生じなかったことも理由として挙げられる。
令和3年度は、未購入の消耗品を購入する予定である。さらに、研究成果公表のための論文投稿費・英文校正費として使用し、本研究を論文として発表する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Development of a novel zebrafish model for aortic aneurysm2021

    • 著者名/発表者名
      Shota Tanifuji, Genri Kawahara, Saki Iida, Yukiko K. Hayashi, Utako Yokoyama
    • 学会等名
      The Joint Meeting of the 126th Annual Meeting of the Japanese Association of Anatomists and the 98th Annual Meeting of the Physiological Society of Japan

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公開日: 2021-12-27  

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