腹部大動脈瘤 (AAA)で多く産生されているPGE2受容体EP4について、疾患進行に関与するEP4発現亢進の分子機序を解明し、AAAに対する新規治療法としてEP4発現を抑制する化合物を探索することが目的である。ゼブラフィッシュをモデルとして使用し、(1) EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュ作製、(2) アンジオテンシンII (Ang II)負荷によるAAAモデル作製を試みた。 (1)では、ゼブラフィッシュEP4bのプロモーター候補領域を導入したEP4レポーターゼブラフィッシュの系統の樹立を目標とし、2種類の長さの異なる領域 (1246 bp、315 bp)を導入した個体を飼育・維持している。EP4レポーターゼブラフィッシュは受精後1日からEGFP発現をin vivoで確認することができた。AAA発症の起点となるEP4過剰発現の誘導メカニズムは現在まで未解明であり、作製したEP4レポーターゼブラフィッシュを用いることでEP4発現を制御する分子機序の解明が期待できる。 (2)では、血管をEGFPで可視化したゼブラフィッシュの1細胞期受精卵にAng IIを注入すると受精後5日目に大動脈径が増大していた。AngIIを注入して8週間飼育後の血管の組織学的変化を検討した結果、Ang II投与群では背側大動脈の弾性線維が断裂しており、免疫組織染色の結果、弾性線維の分解酵素であるMMP-2の発現が増加していた。以上の結果より、稚魚でのAngII投与による血管径の増大が、将来的に血管弾性線維の異常につながる可能性が示唆された。これまでに血管弾性線維の異常を評価できるモデルゼブラフィッシュは存在せず、受精後5日という早期に血管弾性線維の異常を抑制する化合物をスクリーニングできる可能性が期待できる。これらの研究成果は現在論文投稿中である。
|