前年度までの我々の研究では、以下の要領で新たに構造を追加し、新しい弁付き人工導管を開発した。1、人工導管前後壁両方に弁葉を縫着し、弁葉の強度を保持する。2、bulging sinusを人工血管前後壁の弁葉縫着部分に形成し、拡張期血流を同部位に取り込むことにより弁尖の十分な閉鎖を促す。 これら二葉弁導管(直径14mmのePTFE製人工血管に圧さ0.1mmのePTFE製シート弁尖を縫着)と通常の3弁構造を模したePTFE製三葉弁導管(直径14mmのePTFE製人工血管に圧さ0.1mmのePTFE製シート弁尖を縫着について、人工血管前後の圧較差および逆流率の解析に加え、今年度は新たに開口率を算出した。 その結果開口率は三葉弁導管が大きい傾向にあったが、圧較差は同等であり、逆流率においては二葉弁導管が低値であった。弁葉および導管形状を変更することにより、弁機能が向上する可能性が示された。今回開発した二葉弁導管は開口率の向上と圧較差の低減が課題であると考えられた。 上記の知見は以下の学術集会に報告した。 第123回日本外科学会定期学術集会 新しいデザインの小児用肺動脈弁(二葉弁)付き導管の機能特性と課題 2023年4月27日(木)~ 29日(土) 研究期間全体を通じて実施した研究成果として、二葉弁は逆流率の低減が期待できるものの、開口率の向上と圧較差の低減が今後の研究課題であると考えられた。予備実験を開始した流体構造連成解析(Fluid Structure Interaction)による速度分布および粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry)での構造解析によりこれらの課題は解決に至るものと期待できる。
|