研究実績の概要 |
心房細動(AF)に対するMaze手術は、術後の洞調律維持と脳血管合併症予防、QOL向上のために確立された治療法であり、世界的なガイドラインで推奨されている。Maze手術後の心房細動再発を予測する因子として、AF罹患年数と左房径もしくは左房容積の重要性が報告されているが、当院ではf波波高に注目しその重要性をこれまで報告してきた。しかしそのエビデンスは乏しく、世界的にはf波に対して一定のコンセンサスを得られていないのが現状である。本研究は術中の右房・左房電位を実際に測定し、また切除された左右心房の線維化の程度を測定することでf波波高と心房構造的リモデリングならびに電気的リモデリングの関係性を明らかにするものである。加えて心房のmiRNA発現ならびにAT1/AT2発現を測定し、今後の心房リモデリングに対する遺伝子的な治療法を探索する。研究計画書を当院の臨床倫理委員会にて審査し、倫理的指針を遵守した上で研究を行なった。術中心房電位の測定ならびに両心房組織の検体採取は23例のデータ収集を達成し、すべての症例において左房のmiRNAならびにAT1/AT2発現解析を東レ社業務委託により行なった。まずf波のデータにおいては、f波の電位高と、右房/左房線維化には逆相関があり、右房/左房電位高には正相関があることを発見した。特にf波高と左房の線維化とは相関係数 -0.646、P=0.003の逆相関があり、左房電位とは相関係数 0.703, P = 0.002の正相関が認められた。またf波高とAT1/AT2の遺伝子発現に関しては逆相関の傾向があった。miRNAに関してはhsa-miR-208aと左房の線維化ならびに電位に相関が認められた。当センターの倫理委員会からデータ解析と論文執筆のための研究期間延長承諾を得ることが出来たため、2023年度に学会発表ならびに論文を発表する予定としている。
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