研究実績の概要 |
本研究の目的は、免疫抑制性受容体 Leukocyte Immunoglobulin-like Receptor B4(LILRB4, 以下B4)免疫チェックポイント機構について、肺がんにおける腫瘍免疫制御への関与を明らかにする事である。 前年度に引き続き、肺がん手術検体における評価を行った。症例数を増やし、2011年から2013年に東北大学病院呼吸器外科で肺切除を施行した症例のうち、191症例を解析対象とした。これらの症例のうち、142例(74.3%)が腺がん、49例(25.7%)が扁平上皮がんであった。今回の解析により、扁平上皮がんB4陽性細胞浸潤レベルが、腺がんと比較して有意に高いことが明らかになった。 腺がん、扁平上皮がん各組織型について、B4高発現群と低発現群とで臨床病理学的因子との関連性を検討した。腺がんでは18.3%(26/142)でB4高発現が認められ、B4高発現群では血管浸潤を呈する症例の頻度が有意に高かった。また、有意差は見られないもののB4高発現群でがん細胞の分化度が低い傾向を認めた。扁平上皮がんでは40.8%(24/49)と高い割合でB4高発現が認められたが、B4発現レベルと関連している臨床病理学的因子は見出せなかった。 各組織型、病期毎の解析を行った結果、腺がん病理病期Ⅰ期において、B4高発現群ではB4低発現群と比較して無再発生存期間が有意に短かった。その一方で生存期間には有意差は見られなかった。また、扁平上皮がんにおいては、無再発生存期間および生存期間いずれも有意差を認めなかった。
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