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2020 年度 実施状況報告書

間質性肺炎の線維芽細胞におけるArl4cの機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K17743
研究機関大阪大学

研究代表者

木村 賢二  大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50795325)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードArl4c / 間質性肺炎 / 線維芽細胞
研究実績の概要

間質性肺炎の経過中に発症する肺癌の発癌メカニズムには、間質性肺炎の病態が深く関与していると考えられている。Arl4cは、上皮細胞ではWnt/β-カテニンシグナルとEGF/Ras シグナルが同時協調的に活性化しこれまでに、肺癌・大腸癌・肝癌・舌癌・胃癌・卵巣癌など様々な癌腫で癌細胞の増殖能や遊走能に関わることが報告されており、われわれは肺癌患者の切除肺病理サンプルを用いた免疫染色で肺腺癌の前癌病変に高率(約80%)にArl4cが発現することを確認しており、Arl4cが肺癌の発癌過程に深く関与していることを示した。本研究では、間質性肺炎において、病的に活性化した線維芽細胞で発現するArl4cが肺の線維化や間質性肺炎合併肺癌の発癌過程に与える影響を明らかにすることを目的としている。本年度の実験としては、まず、間質性肺炎患者由来線維芽細胞におけるArl4c発現の確認と既存の線維化活性マーカーの相関を比較し、さらにArl4c遺伝子をノックダウンすることで生じるfibroblastにおける増殖能などの表現型の違いを評価した。間質性肺炎合併肺癌切除症例のから単離した活性化線維芽細胞は非合併肺癌切除症例のそれと比較してArl4cの発現は有意に上昇していた。さらに、CTGF,COL1A1,COL1A2,POSTN,FAP,ACTA2などの線維化活性と関わる遺伝子発現の上昇も認めていた。次に、Arl4cをノックダウンし増殖能を確認したところ、Arl4cの発現が低下した線維芽細胞では、発現低下していない線維芽細胞と比較して、増殖能が有意に低下した。以上より、Arl4cは間質性肺炎患者由来の線維芽細胞で強い発現し、増殖に関わる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ヒト由来初代培養の線維芽細胞を用いた基礎研究においての実験進捗は概ね計画通りではあるが、Arl4cノックアウトマウスを用いた基礎研究において、ブレオマイシンを吸入し肺線維症を誘導し、それらの肺を摘出し線維化の程度の違いを確認する実験において実験系の確立に難渋しているため。

今後の研究の推進方策

Arl4cノックアウトマウスを用いた基礎研究において実験系を確立し、肺線維症を誘導したArl4cKOとArl4cWTのマウス肺から線維芽細胞を単離し、Arl4c有無による遺伝子発現の違いを網羅的解析(RNAシークエンスなど)で評価する。さらに、ヒト由来初代培養の線維芽細胞を用いた基礎研究ではArl4c遺伝子をノックダウンすることで生じる、fibroblastにおける増殖能以外の間質性肺炎の線維化活性を反映するとされる表現型の違いを評価する。また、臨床検体および診療情報を用いた後方視的研究では間質性肺炎合併肺癌切除症例の肺癌や気管支上皮化生周囲の線維芽細胞におけるArl4c発現の局在と発現程度を解析し、肺線維症・間質性肺炎を合併しない肺癌切除症例の腫瘍組織と比較して評価することで間質性肺炎合併肺癌切除症例においては、背景肺との相関も併せて検討し、肺の炎症および線維化が腫瘍に及ぼす影響についても明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

Arl4cノックアウトマウスを用いた基礎研究における実験系の確立に難渋したためその実験で行う網羅的解析などの費用を次年度に持ち越す。

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公開日: 2021-12-27  

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