研究実績の概要 |
申請時に記載した実験は①特発性肺線維症(IPF)患者の線維芽細胞におけるPeriostinの発現動向と臨床的因子との相関関係、②IPF患者由来の線維芽細胞から分泌されるPeriostinの機能解析、③線維芽細胞から分泌されるPeriostinが生体内で腫瘍形成能に与える影響と組織学的解析の検討、④ Periostin Anti-sense oligonucleotideの経気道投与の抗腫瘍効果の検討であった. ①:IPF合併肺癌(LC-IPF)と非合併肺癌(LC-nonIPF)それぞれの切除標本(各n=26)でPeriostinを免疫染色し、組織面積に対する陽性率をImage Jで定量した。IPF合併肺癌の癌周囲の特にIPF線維化病変でPeriostinの発現の割合が最も高値であった(P<0.01)。②:正常肺由来 (NHLF, LONZA) とIPF由来線維芽細胞株 (DIPF,LONZA)のそれぞれから培養上清(CM)を作成し、そのCMで肺癌細胞株(A549, NCI-H520)を培養し、増殖への影響を評価した。A549, NCI-H520ともに、DIPF由来のCMで増殖能が有意に亢進を認めた(P<0.01)。③:肺癌細胞株と線維芽細胞株をヌードマウスの皮下に共接種し、DIPFとNHLFの腫瘍増殖の比較をした。腫瘍サイズはDIPFと共接種した群で有意差をもってA549, NCI-H520共に大きく(P<0.05)、免疫染色でもPeriostinが濃染していた。④:検討中である。 現状ではIPF由来の線維芽細胞から分泌されたPeriostinによって肺癌細胞株の腫瘍増大効果は示唆された。次に、IPF由来の線維芽細胞から分泌されるPeriostinを抑制することで腫瘍への影響を検討することで当初からの目標であるIPF合併肺癌における治療標的となりうるかの検討をする方針である。
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