申請時に記載した実験は①特発性肺線維症(IPF)患者の線維芽細胞におけるPeriostinの発現動向と臨床的因子との相関関係、②IPF患者由来の線維芽細胞から分泌されるPeriostinの機能解析、③線維芽細胞から分泌されるPeriostinが生体内で腫瘍形成能に与える影響と組織学的解析の検討であった. ①-③に関しては初年度に報告した通り、IPFによって活性化された線維芽細胞が、Periostinを多量に発現することで肺癌細胞株の増殖を亢進することが示唆された。最終年度は③の継続として、Periostin受容体発現制御による腫瘍増殖能の解析を行った。具体的には、Periostinの受容体のintegrinβ3(ITB3)をKnockdownした肺癌細胞株(ITB3-depleted)と非哺乳類のRNAをKnockdownした肺癌細胞株(Mock)を作成し、まず、in vitroのMatrigelを使用した3次元培養による増殖assayで評価した。MockはIPF由来線維芽細胞株(DIPF)の培養上清(iCM: Periostinが多く含まれる)で増殖亢進を認めたのに対し、ITB3-depletedではiCMによる増殖が抑制された(P<0.01)。次にin vivoにおいて、ITB3-depleted(Mock)のみかDIPFと混合したものをそれぞれヌードマウスの皮下に共接種し(各群n=5)、28日目に評価した。腫瘍重量とKi-67発現は共にMockではDIPFの有無で有意差(P<0.01)を認めたが、ITB3-depletedではDIPFの有無で有意差は無かった。 当研究で、IPF背景肺における活性化した線維芽細胞がPeriostin分泌を介し肺癌の悪性度を高めており、Periostinが間質性肺炎合併肺癌の病態に合わせた新たな治療標的になりうる可能性が示唆された。
|