研究課題/領域番号 |
20K17746
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
名越 章裕 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90860297)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺がん / がん診断 / 腫瘍マーカー / ELISA / エクソソーム |
研究実績の概要 |
小胞体の構造維持に関与するII型膜タンパク質のcytoskeleton-associated protein 4(CKAP4)は、膵がん・肺がん等の種々のがんの細胞膜にも発現している。CKAP4は、Wnt/β-cateninシグナルの構成因子である分泌タンパクDKK1(Dickkopf1)の受容体として機能し、ホスファチジールイノシトール3リン酸キナーゼ(PI3K)とAKTを活性化する事で、がん細胞の増殖を促進することが分かってきた。さらに、CKAP4はDKK1と結合後、エクソソームとして細胞外に分泌される。「肺がん患者においてSandwich-ELISAを用いた血清CKAP4濃度の測定は可能であるか」,もし可能であるならば、「CKAP4は腫瘍マーカーとして臨床応用可能であるか」、また実際に「CKAP4は肺がん細胞からどのように血液中に分泌されているのか」という疑問への答えを探す研究を行っている。 これまで、Sandwich-ELISAにより、92例の肺がん患者、および年齢・性別をマッチさせた健常者における血清CKAP4値の測定を行った。その結果、肺がん患者における陽性例は健常人よりも有意に多かった(P<0.01)。また、抗CKAP4抗体を用いた組織免疫染色を行ったところ、血清CKAP4陽性率は染色陽性群において陰性群よりも有意に高率であった(P < 0.01)。以上の結果から、サンドイッチELISA法によって血清CKAP4濃度を測定することで、肺がん組織のCKAP4発現を予測できる可能性が示唆された。 CKAP4のエクソソーム中への分泌機構に関しては、DKK1のノックダウンによってエクソソーム中のCKAP4分泌の減少が見られた事から、DKK1-CKAP4の結合が起きると細胞膜上のCKAP4がエンドサイトーシスを受け、最終的にエクソソーム中へ放出される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺がん患者における血清CKAP4値のELISAを用いた測定は終了した。また、免疫染色を行い、血清CKAP4と肺がん組織のCKAP4発現に関しても相関があることを見出した。 CKAP4がエクソソーム中に分泌されるメカニズムを解明するための細胞実験に関しても、おおよそ順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、血清CKAP4の値と肺がん手術後の長期予後の関係に対する解析を進めていく予定である。 また、ヌードマウスへの皮下xenograftモデルを用いて、抗CKAP4抗体がヒト肺がんの治療に有用であるかを見極めるin vivoの実験を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス流行の影響で研究活動が一時停止し、一部の実験の進行が遅れた。今後、マウスを用いた実験や抗体などの試薬購入のために使用していく予定である。
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